そばに居るから。 2 (ページ14)

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side涼太

1次審査の日から数日経ったある日、1次審査通過を知らせる手紙が届いた。

それからまた少しして。

相変わらず鎖に繋がれる日々。

母「もし家や家族を取材したいって言われても絶対に断るのよ」

涼「取材、？」

母「とにかく、オーディションの人たちを家に連れてこないでね。何言われても断るのよ」

涼「？はい、」

取材ってなんだろう。

この世の中には、俺の知らない言葉だらけだ。

生きていくために必要最低限の言葉は覚えていたつもりだった。

だけどよく考えれば、オーディションで出会った龍友くんも、よくわからない事を言っていたと思い出して。

涼「コーヒー、？とか、ココア？って何ですか、」

確かそんな名前を言っていたような。

母「あんたにはこれで十分なのよっ！」

少し黙り込んだ後、勢いよく水を投げつけられた。

母「まったく、どこでそんな物覚えてくるのよ」

鎖のせいで思うように動けない俺は、顔面に水の入ったペットボトルを食らい、ジンジンと痛む。

涼「はぁ、」

電車を待ちながら俯くと、何度もため息が出てくる。

2次審査。行きたくない。

そう思いながらも俺は、東京へ向かうために電車を待ってるんだ。

龍「あれ、涼太？やんな、僕やで、龍友」

涼「ぁ、」

いきなり声をかけられて顔をあげると、少し前に見た顔があった。

龍「よかった、涼太も1次審査は通過しててんな」

まぁテレビ出てたし、なんて呟いた所に反応してしまった。

涼「て、れび？」

なんだろう。たぶん情報を教えてくれる何かなのかな、と勝手に想像していく。

龍「え、見てへんの？」

見る、？

キョトンと首をかしげる俺を見て、龍友くんは心底驚いた表情で俺を見つめた。

龍「あの、さ、涼太のこと馬鹿にしてるわけやないんやけど…テレビって、わかる？」

俯いた俺の顔を覗き込みながら、ゆっくりとそう聞かれても。

涼「…わかっ…ない…っ、ごめっ…」

龍友くんの驚いた顔が頭から離れない。

いたたまれなくなって、思わず駆け出した。

はずなのに、また腕を龍友くんに掴まれていて。

龍「いやっ、ごめん。変なつもりちゃうねん」

バツが悪そうに言葉を濁らす龍友くん。

微妙な空気のまま電車が来てしまって、行こ、と手を優しく引かれて電車に乗り込んだ。

座席は3席ほど離れていて、
東京に着くまでは顔を合わせることはなかった。