うちの妖、平和な日常。○○してみた、されてみた (ページ45)

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あの音色はもう聴けない　Ⅱ ページ45

Aside

あの後私は、ケイと一緒にさとり兄弟の元へ向かった。

マコトとサトルは私達に気が付くと、ルイの容態を伝えてくれた。

マコト
「…Aさん…ルイは今のところ、落ち着いています。しばらく安静にしていれば、
　回復すると思いますよ」

サトル
「僕たちも、倒れたって聞いてびっくりしたけど…大丈夫だよ。安心して」

私はそのことを聞くと、今までの疲れがどっと押し寄せてきて、そのまま…眠ってしまった。

マコトside

…とりあえずは大丈夫そうだ。後は…病気か何かでないことを確かめるために、

僕とハヤで「視る」だけ…

ルイ
「………？」

『あ、良かった、目が覚め…た…？』

そこまで言いかけて、僕は言葉を切った。

…ルイの様子が、明らかにおかしかったからだ。

僕が言葉を発した瞬間、ルイのわかば色の瞳がきゅっと細くなり、

両手で素早く耳を塞いだ。

『…え？ルイ…どうして…？』

僕が言葉を続けると…

ルイ
「……ッ！」

ルイは涙目になって、激しく首を横に振った。耳を塞いだまま…

……まさか……。

嫌な予感がする。この症状は確か…本で読んだ…とある奇病…

「メロディーリジェクション症候群」の症状に…そっくりだ…

…「メロディーリジェクション症候群」…。

音楽を愛する全てのひとに発症する恐れがあるが、滅多に発症例は無い。

そして、症状は…「ありとあらゆる『音』を拒絶する」…言わば、「音アレルギー」だ。

他の人の声は勿論、自分の声さえも拒絶するため、話すことが出来なくなる。

…ピアノの音だって、拒絶する。

…ルイは……もう…ピアノを弾けないんだ……

『…サトル…今…やれることを…やりましょう…』

サトル
「…うん…わかった…」

…Aさんには…この事…知らせたくないな…

そう思いつつ、僕は「ある物」を作っていた。

それは、ヘッドホン。全ての音を…シャットダウン出来るように、

強力な術が施されているものだ。

本当は、こんな物いらないはずなのに。

Aさんは…この事を聞いて…

いつもの、明るいAさんのままで…いられるのかな…