ドライヤータイムby西岡 ページ5
「だから、早く寝ないと身体に響きますって」
Aちゃんの顔は、『コイツ、何言っとんねん』って露骨に言ってる。
西「髪を早よ乾かしたら済む話やん」
「……」
Aちゃんの眉間にシワが寄った。
女の子やねんから、それやめーや。
西「ほら、座り」
簡単なイス持ってきて、座るように誘導する。
「…じゃあ、お願いします」
西「まかしとき!」
しゃーなしって感じで、Aちゃんが座った。
でも、そんなん忘れさせてやるわ。
美容師・西岡剛の登場や。
西「分け目、どっち?」
「左でお願いします」
西「メシん時、右やったのに?」
「1週間ごとに、右左で変えるんです」
Aちゃん曰く、ずっと同じ分け目やったら、将来そっから薄くなってくるらしい。
へぇー、そんなんまで考えねんや。
西「俺なんて年中帽子やから、すぐにハゲそう」
「そん時は、育毛剤をお渡ししますね」
あぁ、めっちゃ可愛い笑顔!
…でもさ、この状況でやらんといてほしいわ。
振ったんは俺やけど、結構傷つくから。
◆◇◆
ドライヤーを当ててたら、Aちゃんは気持ち良さそうな顔する。
「彼女さんにもしてたんですか?」
西「…急に何やねん」
珍しい単語が出てきた。
鏡越しのAちゃんは、俺をじっと見てる。
「だって、手慣れてるから」
西「そんなこと、思ってんの?」
「はい」
即答かい。
思ってても、口に出さんといて。
西「俺は器用なだけで、やったことないわ」
「西岡さんやから、色んな人にやってるんやと思ってました」
あぁ、心にグサッってくる。
今、見事にえぐってきたわ…。
誰やねんな、もう!
変な情報を吹き込んだのは!
西「なぁ。さっきの泊りって、生きてる?」
飲み場の約束ほど、信用のないもんはない。
世の中はそうやけど、俺は本気。
下心ナシで、ホンマにしたいねんって。
「もちろん」
西「ホンマに?!」
よっしゃー!
生きててよかった!
「お酒を飲んでても、約束は守りますから」
Aちゃんは、俺からドライヤーを取ると、照れ気味の笑みをしてくれる。
「ありがとうございました。早くお休みになってください」
俺の器用さを恨むわー。
あんなに濡れてた髪が、もう完全に乾いてる。
もうちょい、時間稼ぎすりゃあ良かった。
西「じゃあ、おやすみのハグしよ」
「はい。おやすみなさい、西岡さん」
腕を広げれば、Aちゃんが入ってくれる。
一瞬やったけど、俺の気分は最高潮や。
西「あぁ、おやすみ、Aちゃん」
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Quintet(プロフ) - ゆかさん» コメント、ありがとうございます。あちゃー、私のルーティンがバレてしまいましたね(笑)。あともう半日、あと数時間を過ごす一息になればと思っています。これからも、よろしくお願いします。 (2016年10月14日 16時) (レス) id: 7f540aaaaf (このIDを非表示/違反報告)
ゆか - 毎日更新されるのが楽しみです! 毎日4時過ぎにこのお話更新されているか見てしまいます。笑 これからの楽しみにしています! (2016年10月12日 15時) (レス) id: c3eab76729 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Quintet | 作成日時:2016年10月4日 15時