２５ページ:面影 ページ25
「じゃあ、何か食べたいものはあるかい？」
お粥を食べさせることは諦めたのか、おじさんはそう言った。ただ、何が食べたいというより何も食べたくないので、首を振る。
おじさんは考え込むように俯く。
「じゃあ…ゆっくりでもいいから、一口ずつ食べよう。時間かかってもいいからさ」
ね？とこちらの肯定の返事をもらうべく視線を向けてくる。
…食べないと、確かに具合が良くなるわけでもないのは事実。確かにそうだが…いくら保護者の友人とはいえ、全く知らない人が作ったお粥を食べるのは気がひける。スーパーで買ったとかならまだ信用できるが。
私が迷っているとあともうひと押しだと思ったのか、おじさんはもう一声掛けた。
「…食べなきゃ、治るものも治らないぞ」
だからこうして迷っているのだ。
私はお粥を睨むように見た。
「…」
…腹を括るしかないか。
私は嫌々ながら頷き、お粥を食べさせてもらった。
「いけるか？」
とっても小さい一口だったからおじさんが不安になったのか、こちらの様子を伺いながら尋ねた。正直、もうこれでご馳走様したいと言いたかったが我慢した。一口一口が小さかった為、小さな茶碗一杯を完食するだけでも三十分以上はかかったと思う。
「よく食べたな」
褒めるように、おじさんの手が私の頭に乗せられた。扱いは当然だが、子供へするそれだ。
「…名前」
痛む頭を抑えながら、そういえば聞いていなかったな。と思い茶碗とれんげを片付けようとするおじさんに質問を投げかけた。おじさんは私が何か言ったことに気づき足を止め、こちらに視線を向ける。
「名前、何」
「俺か？」
この部屋におじさんと私以外に誰がいる。
私は頷いた。
「……、いや…佐々木 光だ」
何かを言いかけたが、それを引っ込めるように別の名前を言った。
…？一体何を言いかけたのだろうか。しかも何かを迷いながら名乗った。…まあ、いいか。
「光お兄さんって呼んでくれていいぞ？」
「…分かった、おじさん」
私がわざとそう言うと、あからさまに凹んだような態度をとった。名前を名乗ったのにおじさん、と呼ばれるのが気に食わないようだ。…おじさんって最初に言ったのはそっちだろうに。
「…俺まだ、26歳だぞ？」
そうなのか。髭を生やしていたし、てっきりも三十代近くなのかと。
…にしても、26歳か。
＿＿＿『おーい、早くこっち来いよ！』
ずきりと痛んだ頭に、思い出せない夢の中の人物の声が響いた。
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卵かけご飯の醤油 - みつるさん» ああ、確かに盛者必衰の方が多分内容的に合ってますね。私、てっきり諸行無常も盛者必衰も同じような意味かと思ってて…今ウィキ先生で調べてみました。どうやら意味合いが違うようです…わざわざご報告、ありがとうございます。修正しますね。 (2019年5月29日 19時) (
レス) id: ecf6ee3b9e (このIDを非表示/違反報告)
みつる - 49ページなんですけど…諸行無常ってなんとも言えないという意味だと思います。多分盛者必衰の間違いかと…間違ってなかったらすみません(>_<) (2019年5月29日 18時) (レス) id: d6e134e20f (このIDを非表示/違反報告)
卵かけご飯の醤油 - すすぎさん» そうなんですか…もしよろしければその私の小説と似ているという小説の題名を教えてくれませんか？出来ればその小説と話が被らないようにプロットを書き直すつもりなので… (2019年5月26日 12時) (レス) id: ecf6ee3b9e (このIDを非表示/違反報告)
すすぎ - あまりにも似てるものがあったので..... (2019年5月26日 11時) (レス) id: 28118ed8c0 (このIDを非表示/違反報告)
卵かけご飯の醤油 - ありがとうございます。まさか読みやすいというコメントを貰うとは思っていませんでした…嬉しいです。これからも更新頑張ります。 (2019年5月25日 14時) (レス) id: ecf6ee3b9e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：卵かけご飯の醤油 | 作成日時：2019年5月17日 15時
