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、
ミーン、ミーン、と
夏の名残を知らせる蝉が鳴く。
教室の3階から見上げる空は
高くて、とても遠い。
窓際の席は運がいい
暇な授業はこうして、世界の音を聴ける。
私のお気に入りの小説が来月映画化されるらしい。
その小説の中の彼女も
私と同じ種類の人間だった。
「じゃあ永瀬、続きから読めー」
プツリ、と旋律が閉ざされる。
止まったままの鼓動がトクトクと動き出す。
すっきりとした端正な声が教科書を読み上げる。
こうして永瀬くんに注意が向くのは
かつての初恋と重ねているからだ。
今はもう会うことのない、初めて心を通わせた少年と
下の名前が同じなだけ。レン。
「えたいの知れない不吉な塊が私の心を始終圧おさえつけていた」
永瀬くんの声はスラスラと
高校二年生、二学期から始まった『檸檬』を読み進めていく。
お昼休み終わり、5限目
私の目の前の席に座る野球部の岸くんは机に突っ伏して眠っている。
その隣の高橋くんは引き出しの中でスマホをいじり、こそっと岸くんを撮っている。
彼らの二人きりの世界を
覗き見している私と
彼らなんてまったく目にも入らない
永瀬くんの単調な音読
「よし、じゃあ続きは橋本ー」
永瀬くんの後ろの席の女の子が立ち上がり
かの泣くような声で音読を始めた。
私はまた、世界の旋律を楽譜に起こした。
国語の教科書とノートの下に敷いておいたものを
上に持ってくる。途中までで止まっていた音を
さっきのところから再生する。
そっと目を閉じて
風の音を感じる。
ファサファサと、目の前をとおりすぎていく感覚
私を洗って、そのまま連れていくような
いま、秋風が、吹き始めたんだな。
私はボールペンをおいた。
今日の作業はここで終わりだ。
楽譜を閉じてカバンにしまい
もう一度国語の教科書に目をやった。
チラリと永瀬くんを見る。
彼も教科書を目で追っていた。
その目に光は宿らない
私はその目をずっと見つめていた。
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ミッキー(プロフ) - はじめまして！いつも読ませてもらってます！すごく楽しませていただいてます！添えて、染まれのパスワードを教えていただきたいです！ (2020年6月11日 19時) (
レス) id: dacd537689 (このIDを非表示/違反報告)
花(プロフ) - いつも楽しみに拝見させていただいております！添えて、染まれ。を読みたいのですが、パスワードはどのようにすれば教えていただけるのでしょうか、、？これからも沢山読ませていただきます！ (2020年5月31日 12時) (レス) id: c1ff98d1a5 (このIDを非表示/違反報告)
桃(プロフ) - 作品に出てくる言葉一つ一つが綺麗で言葉の選び方がすごく好きです！作品の雰囲気も素敵でした！素敵な作品をありがとうございました！ (2019年12月6日 8時) (レス) id: 2427705538 (このIDを非表示/違反報告)
nny(プロフ) - 今回の作品もすごく面白いです！！前に書いていた勝利くんのやつが気になるので機会があればお目にかかりたいです！！ (2019年12月5日 14時) (レス) id: 5f3b77eda2 (このIDを非表示/違反報告)
ドレミ - すごい感動します！ (2019年12月5日 11時) (レス) id: 073a14a158 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：霞草
| 作成日時：2019年12月2日 8時
