キュンとしたのに ページ41
『よし、着いた。ラーメン食うぞ』
先に車を降りた西島君は、助手席のドアを開け私に右手を差し出してくれた。
こんなことをされたのは初めてだったから、私は一瞬面食らった。
でもそのちょっとした優しさが、今の私の胸をうずかせたのも事実。
『泣き虫で食いしん坊のみお、行くぜ』
西島君は私の左手を取ると、ゆっくりと引いて車から降ろしてくれた。
「もうっ、キュンとしたのに。一言多い」
『あっはは! キュンとした? やった!』
彼は上を向いて笑い、小さくガッツポーズをした。
「西島君て、優しいのかいじわるなのか、わからない」
『俺、みおにはいじわるしたくなるの』
何それ、意味がわからない…
「はい、キャップ。返す!」
私がかぶったままだった西島君のキャップを取り、彼の頭に乗せた。
『なんだ、取っちゃうの? 似合ってたのに。かわいくて』
「またっ、そうやってからかう」
『ぷっ、みお顔赤い。かーわい』
……
腰を屈めて、私の顔をのぞき込む西島君。
私は反射的に顔をそむけた。
もう、何も言うまい。
相手にするだけ、こっちが振り回されちゃう。
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作者名:さら | 作成日時:2018年10月29日 0時