君と (ページ37)

今日:1 hit、昨日:11 hit、合計:194,496 hit

今日1番の笑顔(side N) ページ37

「みおってさ、実は食いしん坊だろ？ラーメンって聞いたらテンション上がった」

俺がニヤニヤとみおを見ると、彼女は恥ずかしそうに反論した。

『そんなこと、ないと思う』

「そう？前のカラオケでも、大きなパンケーキ注文して美味しそうに食べてたじゃん」

彼女の頬がわずかに膨らむ。
俺への無言の抗議かな。

でもそれ、逆効果だって。
もっといじめたくなるんだって。
かわいいやつ。

『西島君ていじわるだよね。中学の時のイメージと違う』

「俺も、みおが食いしん坊だとは知らなかった」

彼女の瞳がくるんと動いた。

くっきりとした二重まぶたの目。
その黒い瞳に俺が映ってる。

「そんなに見つめないでよ、照れる」

『…見つめてない、にらんでるの』

え？

にらんでる？

「あっははははは！それ、にらんでるの!?
見つめられてると思った！」

笑いがとまらないわ。

にらむって、もっと鋭い目つきじゃないと。
みおの “にらみ” は控えめだな。

『もうっ』

みおはくやしそうな顔をした後、一緒に笑いだした。

今日1番の、彼女の明るい笑顔だ。
俺はその笑顔が見たかったんだ。

『ありがとう。西島君のおかげで心が軽くなった』

みおのまっすぐな瞳。
吸い込まれそうな程、澄んだ瞳だ。

彼女は俺からの言葉を待ってる。
でも、言葉が出ない。

俺の視界に、みおの唇。

暗い車内、彼女の紅い唇だけが色彩を放っている。

そして、ゆらゆらと揺れる彼女の瞳。

俺はゆっくりと、重心をみおの方へ移動させた。