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ミス ページ27

「申し訳ありません!」



私は深く頭を下げた。



やってしまった…



『こういうの本当に困る。全部一からやり直しだよ』



そう言って書類をデスクに放り投げる、パッケージデザイン担当の平井さん。



「はい、私の完全な伝達ミスです。申し訳ありません」



『ったく、橘、変だぞ。こんな初歩的なミス、新入社員だってやらないよ』



その通りだ。
大事なデザインの修正を伝え忘れるなんて。



「…はい、言い訳のしようがありません」



『急いで修正はするけど、プレゼン明日だろ? しっかりしてくれよ』



「はい、よろしくお願いします。本当に申し訳ありませんでした」



再度頭を下げた。






だめだ。
平井さんの言うとおり集中できていない。
こんなミス、自分でも信じられない。



でも起こってしまった事を悔いても始まらない。
これからどうするか考えないと。



それから、他部署に状況を伝え、その度に頭を下げ続けた。







定時を過ぎた午後6時半、平井さんからパッケージデザインが修正されたデータが届いた。



急いで平井さんのデスクへ向かった。



「平井さん、ありがとうございました! 本当に」



『あーもう勘弁してくれよ、こういうのは』



退社する準備をしていた平井さんが、笑いながら言った。



「はい、すみませんでした。ありがとうございました」



『橘、最近疲れてるみたいだから、今日は早く帰ってしっかり休めよ。じゃおつかれ』



「はい、お疲れ様でした」



退社する平井さんの背中に、深く頭を下げた。






次は、平井さんから送られた修正データをまとめなきゃ。



平井さんは気遣いで早く帰れって言ってくれたけれど、今日中に明日のプレゼンの資料も修正しなければいけない。



窓の外を見るとすっかり日が落ちた東京の空。



今日も原田主任と会っていない。
主任は終日外回り。
こういう時、少しでも顔を見られたら嬉しいのに。



主任と過ごしたのは先週の木曜。



誘われなければ、私は彼と一緒にいることができない。



恋人なら、“会いたい”ってわがままも言えるのかな。






まただ…



こんなんだから、あんなあり得ないミスをするんだ。



集中しなきゃ。

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作者名:さら | 作成日時:2018年10月29日 0時

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