7色の後ろ側 8《赤》

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重「お世話になります」
「...お世話になります」

仲「はい。お部屋までご案内致しますね。
お荷物は以上でよろいですか」


美人女将さんの後ろから現れた仲居さんが私達の荷物を手に取る。


重「あ、これ俺自分で持つんで、こっちだけ頼んでもええですか？」


そう言って私のキャリーを差し出す。


「あ、私も自分で持ちます」

仲「あら、大丈夫ですよ。こちらへどうぞ。
足元お気をつけ下さい」


少しご年配の仲居さんは笑顔で軽々荷物を持つと先頭を歩き出した。




「「うわっ...」」


和室独特の懐かしい匂いと温かさ。
それに合わせて感じるとんでもない高級感。
つい声が出たのはしげも同じだった。

そんな私達を見て仲居さんが優しく笑う。
その笑顔でこの人がいい人だって言うのがすぐわった。
なんだろう、濱ちゃんみたいないい人オーラを感じる。

そのまま慣れた様子で一通りの説明をしてくれた。


仲「こちらの右手奥の扉が客室露天となります。
今は襖閉じてますけど、あちら開けて頂けたら露天もご覧頂けますので。
ぜひね、辛くなければ朝方もとても素敵ですからご利用くださいね」


その言葉に驚いてしげを見たけど、全然目が合わない。
でも鼻掻いてる。照れてるな。

客室露天、私が前いつかの彼女にとっておきなさいって話した...だからなの、かな。
そう思うと私まで恥ずかしくなってくる。


仲「あとはー...そう、そう。女性の方には浴衣お選びいただいております。
衣装部屋までご案内致しますが、お連れ様はいかがされますか？」


ぱっとしげを見ると、びっくりした顔してすぐに首を横に振った。


重「そんなん、俺はええから。お前勝手に好きなもん選んでこいや」


しっしって払うようなジェスチャーまでつけて。


仲「それじゃあ、先にそちらご案内致しますね。
お連れ様はこちらでお待ちください」


さぁ、と促されて私はしげを置いて一度部屋を出た。




衣装部屋と言った小さな部屋にはいろんな浴衣が置いてある。


「わぁ...！」

仲「ふふ、女性の方は浴衣お好きですよね」

「はい！実は、大好きで」

仲「あら、じゃあいくつかお待ちかしら」

「淡い黄色と、深緑の浴衣が」

仲「じゃあ別の色にしましょうね。こちらそのままお持ち帰り頂けるので」

「えっ」


浴衣、もらえちゃうの？


仲「こちらの旅館のご予約はお連れ様で？」

「あ、はい」

仲「まぁ！それでしたらサプライズですね！」

「...は、い」


そう言うと仲居さんがぐっと着物の袖をまくった。


仲「さぁ、お連れ様が惚れ直すような浴衣、選びましょう！」

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