7色の後ろ側 6《赤》

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重「ちゃうやん」

「何が？」


しげが私を真似て天井に向けて手を伸ばす。


重「お前やって店長なりたてやで？絶対大変やん。
しかも好きな奴とは遠距離になるしよぉ。

やけどそれを出さんよう努力してたんちゃうの？
どーせ、愚痴とか弱音言いたくても我慢したんやろ。
お前の事やから一哉の方が環境も変わって大変やーとか思ってさ」

「...」

重「そんなん俺でもすぐわかんで。
ほんまもんのアホやな一哉。

...あ？なんやねん」


しげがあっさり言い切るもんだから、私は何も言えずにただしげを見返した。
それに気づいたしげが不思議そうにこっちを見返してくる。


「...別に、なんもない」



私達が別れた後、皆、一哉の事を最低って言った。
優しさを向ける相手が違う。
1番優しくしなきゃいけない相手を間違えてるって。
その通りだって、思ってた。

でもその時、同時に言われた。
Aが思ったより元気そうでよかった。って。


元気なんかじゃなかった。
信じてて、大好きで。
運命なんて、そんなの私が誰よりも感じてた。

それでも毎日仕事はあって、スタッフは私を頼ってくれてたし、弱さなんて見せたくなかった。
一度弱さを認めたら、そのまま崩れ落ちる気がして。
それが1番怖かった。

そうだよ、我慢してたよ。
愚痴も、弱音も本当はいっぱいあった。


重「お前、こんなわかりやすいのにな(笑)」

「うざい、本当に...っ」

重「すぐ泣くし」

「泣か、ないし」

重「じゃあこれ何やねん(笑)」

「鼻水だし、っ」

重「汚ねぇ！
手でぬぐってもうたやんけ(笑)」


しげの手が私の涙を拭う。



重「ええなぁ、一哉。
こんな泣くほど想ってもらえて」


違うよしげ。
わかってくれた事が嬉しいの。
しげの手が、声が、あったかくて、優しくて。
だから余計に胸が苦しくて泣けてくるの。


しげの事が、すきだ。



「...くそ、っ」

重「口悪いなぁ！
お前もっとしおらしく泣けや(笑)」

「...美和に怒られる」

重「は？何で？」

「腹を括る時がきたのかもしれない」

重「待てや、全然意味わからへん」

「もう、泣かん...！」

重「俺を置いてくなや！(笑)」


自分でも目元を拭って気合を入れる。
しげは不思議そうにしてたけど、私が泣き止んだのを見たら満足そうに笑った。



AA、腹を括ります。

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