7色の後ろ側 6《赤》

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しげのずるい所は、普段のしげからは想像できないような、甘い声を出す所。

私の手を掴む手は小さくてちょっとぷくっとしてるのに、そこから伸びる腕はがっしりして男らしい所。

いつも乱暴に絡んでくる癖に、こういう時に掴んでくる手の力がやたら優しい所。


「...」


そのまま素直にベットへ戻る。

そしたらほら、嬉しそうな顔して、笑う所。


「...なんで」


こんな事ばかりされたら、私も流石に期待してしまう。


重「...何か言うた？」

「ううん、何でもない。おやすみ」

重「ん。おやすみ」


しげに背中を向けてぎゅっと目を瞑る。
なんで、こんな苦しいのに、それが嫌じゃないんだろう。
もっと隣にいたいって思ってしまうんだろう。









side 重岡

たぶん、そのうちそろっとベット抜け出んすやろな。って思ってたら案の定やった。

手を掴んでそれを止める。


Aはしばらく難しい顔しとったけど、そのままベットに戻ってきた。
それが嬉しくて顔がニヤける。

Aはそのまま背中向けて寝る体制とっとるけど、たぶんこいつ、寝てへん。


重「なぁ」

「...何」


ほらな。


重「一哉の事聞いたら怒る？」

「別に怒らないよ(笑)何が気になるの？」


Aが体を反転させてこっちを向く。
そこそこな距離での向かい合わせって照れんねんけど。

やけど今日はこのまま話す。
神ちゃんに喝入れてもろたから。
気になってた事聞いたんねん。


重「いつ出会ったん？」

「花屋の時。送別会の花束頼みにたまうちの店使ってて」

重「うわ、客やったん」

「そう。
そのうち自分の家にも飾るってよく店に顔出すようになって、連絡先渡されたの」

重「うへぇ」

「何よ(笑)」


そんなドラマみたいなん事実際にあるんや。


重「どこが好きやったん？」

「いい人な所。
人にも動物にもなんなら虫にも優しい人だったねぇ」

重「なんやそれ(笑)」

「付き合う前にデートしてて。
待ち合わせ場所で羽化したばっかの蝉が木から落ちてんの助けてるの見て惚れたね」

重「うっそやろ！？w」


なんなんそれ！完全ネタやん(笑)


重「どんくらい付き合ってたん？」

「え？22だったからー...」

重「若ぇ(笑)」

「うっさいなぁ(笑)
...3年半くらいかな、だいたい」

重「ほーん」


付き合う言うたらそんなもんなんかもしれんけど。
3年て長く感じる。

俺は俺で仕事がこんなやからアレやけど。
俺は同じ期間、特定の誰かを好きになった経験なんてない。

それに聞いてたら嫌でも感じてまう。


重「運命っぽいな」

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