7色の後ろ側 6《赤》

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控室で皆の歌を聞く。
これが終わったら私は移動車の準備に行かなきゃいけない。

今回は聴かせる系のバラードだから皆横一列に並んでスポットライトでそれぞれを照らすシンプルなステージ。


それぞれのソロパートが始まって。
やっぱり、神ちゃんの声透き通ってて綺麗だなぁとか。
淳太くんは声だけじゃなくてちょっとした手ぶりですら曲に寄り添ってるなとか。

しげはこういう時でも笑顔で、カメラ目線も絶対しない。
それがしげらしいっちゃしげらしいけど。

あ、そろそろしげのソロパートだ。





“好きだよ。ねえ好きだよ。きみのことが
それさえも言えずにいたけど”





しげ、カメラ見た。一瞬だけど、がっつり。
あまりにも切ない表情で。

それに声が、すごい。
気持ちが乗ってるのが伝わってくる。

その瞬間会場がすごく湧いたのがわかるし、それは横に並んでいたメンバーも同じなんだろう。
そこからの皆の盛り上がり方がまたすごい。


歌が終わった後も、美和と黙って液晶を見つめる。


「...」

美「やってくれたね」


美和はニヤリと笑って嬉しそうで。
私は動悸が止まらない。


「...車、移動してくる」

美「うん、よろしく」


ふらっと立ち上がった私の背中を美和が優しくぽんと叩いた。









重「なんなん？」

「...何が？」

重「お前の態度、あからさますぎやで」


私が退けた手は行き場をなくし、しげのズボンのポケットへ。
しげの声が低くて、怖くて顔を見れなかった。


「アイドルなんだから」

重「あ？」

「そんな、人前で女にくっついたらダメでしょ」

重「別に手ぇ繋いどる訳でもキスしとる訳でもないやん」

「それでもっ...」


言いかけたタイミングでエレベーターが小さな音を立てて扉を開いて、すでに乗り込んでいた人達に軽く会釈をして私達も乗り込む。


重A「「...」」


エレベーターが降りていく時の独特の重力を感じながら、もうこのまま駐車場に着かなければいいのになんて、軽く現実逃避してた。


重「ほんで、それでも何やねん」

「...」


あっけなく着いた地下駐車場でしげが口を開く。
でも私は熊谷さんにあんな事を言われた手前、警戒してしまう。
本当に誰もいないのか、どこか隠れて聞き耳立ててるかも。


しげの問いに黙ったまま運転席に乗り込んだら、しげは後部座席じゃなくて助手席に乗り込んできた。


「ちょ、」

重「話終わってへん」

「...」

重「なぁ」


触れたらいけないと思ってるのかしげは私の服の袖を小さく摘んだ。強い口調と裏腹に。

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