7色の後ろ側 6《赤》

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いやなんか、プライバシー的にさ。
作詞って自分曝け出すみたいで恥ずかしそうだし...。
そう思うと覗かない方がいいのかなって。


テーブルに置いてあったタブレットの共有フォルダから、しげ達のフォルダを開く。

あ、本当だ。できてる。


「...すごい」


素直にそう思った。

だって、まさかしげがこんな風に言葉選んで、こんな胸がきゅうっと締め付けられるようなもの作るなんて。
切ないのにうんと幸せを感じる歌詞。



美「しげ、テーマは初恋にするって1番すらすら書いた所で手止まっちゃったのよ。
続き書いてもなんか薄っぺらくて嫌やーとか、一丁前に言ってさ。

照史はほっとけって言うけど、さすがに期限もギリギリで。

私のアドバイスなんて嫌がるのわかってたんだけどね。
赤裸々に体験談全部書き出せとは言わないけど、好きな人にされて嬉しかった事とかなかったの？って」

「そんなん、しげ書くの嫌がりそう」

美「まーね(笑)
そしたら台本の隅にいろいろ書き出して」

「歌詞？」

美「ううん。私もよくわからないんだけど、いろんな単語。
ラムネとか滝とかそれこそキャップとか。
あとなんだっけな...群青とか爪とか本当に、意味不明なんだけど」



心臓が、すごい勢いで跳ねた。



美「これは狙いすぎとかこれは違うとかブツブツ言いながら、もうちょっとだけ時間くれって言われて。

その次の日だよ。書けたから照史と確認してって言われたの」

「へ、え」

美「あれ」


そう言って美和が見たのは皆の荷物を置いている一角で。


美「...あのキャップ、元々Aのだよね？」

「...」


その中でもしげの鞄とその上に置かれたキャップを見てニヤリと笑う美和は全て見透かしてるみたいで怖い。


「それは、そう、だけど。
...しげの歌詞はフィクション、ですよ」


そう言った私の顔は間違いなく火がでそうなほど赤い。
美和が小さく笑うのがわかった。


「...歌詞変えてくれないかな」

美「ふ(笑)ダメダメ、せっかくいい感じにまとまったんだから変更させません」

「てか、だとしたら別れてんじゃん...(笑)」

美「あくまで初恋がテーマでしたからね」


だってそんな風に言われたら、いつかこの曲が完成した時私は聞くたびに恥ずかしくて堪らなくなる。


美「こんなん狙わずにやってんだから、しげって実は1番のロマンチストかもね(笑)
...あ、ごめんちょっと外すからここいて」

「うん」


そう言って控室を出た美和にむしろ私は感謝してる。
顔の熱を冷ますのに少し1人になりたかった。

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