7色の後ろ側 5《赤》

6 ページ6

しげに目立たない路地で待っててもらってそこに車を寄せる。
すぐに助手席に乗ると思ったら運転席の窓を叩かれた。


「何？」

重「俺運転するから、変わって」

「は？」

重「早せぇや」

「え、何で」

重「はーよーせー！」

「うっさい、ばか！」


しげがなかなかの大声で叫ぶから慌てて運転席を降りた。
しげが躊躇いなく運転席に乗り込むから、私も諦めて助手席に座る。


重「お前座席位置高っ(笑)」

「え、てか何なの」

重「何が」

「何で運転」


そんな会話しながらもしげは座席やバックミラーを自分仕様に動かして。


重「車買い替えようか悩んどって、お前の車どんなもんか気になっててん」



...何だそのしょうもない理由は...。



重「おっしゃ、行くでー」

「...お願いします」



重「なぁ、何か音楽かけてや」

「んー、WESTでい？」

重「おん」


流れる皆の曲に合わせてしげが歌いながら車を走らせる。


重「お前明日何すんの？」

「家でごろごろしながら家事済ます」

重「お前いつもそんなんちゃう？」

「しげは？美和連休で空けてくれてたじゃん。大阪帰ったりしないの？」

重「帰るつもりやってんけど、向こうの友達急に仕事入ったいうて。親も旅行中やしもうええわーって」

「え、残念」

重「車あるし、日帰りできる所にでもドライブしてくるわ」

「一人ドライブとかするんだね」


なんかちょっと以外かも。


重「1人は流石にせぇへんわ。誰か連れてく」

「こっちの友達？」

重「ま、適当にな」


ハンドルを握り白い歯見せて笑うしげになんとなく違和感を感じる。

あれ、そういえばこの光景に見覚えがある。
何でだっけ。しげこの車運転するの初めてだし...。



ん、いや、待てよ。

私が倒れた時ってしげが家まで運転してくれたよね？





「ねぇ、しげこの車運転した事あるじゃん。
私が倒れた時に...」


会話に夢中になってたから気づかなかった。
いや今気づいたけど。もう手遅れだった。


なかなか着かないしげの家。

方向音痴のくせしてセットしてなかったナビ。

目の前に見える高速の入り口。



「ちょっと！どこ行くの！？」

重「ドライブ行くって言うたとこやん(笑)」


そう言った時のしげの顔を私はきっと忘れない。
最高にイラッとする笑顔を向けて来やがったから。

7→←5

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す