7色の後ろ側 5《赤》

24 ページ24

side 重岡

重「...そんなに俺の事好きなん？」


わざとAに顔を近づけて言うたった。
なんや困らせたいって思ってもうて。


「...っ」


Aは言葉もでんらしくて顔真っ赤っかにしながら口をちっさく開いて震わせとって。
泣きだしそうなくらいめっちゃ困った顔しとる。
何やろ、それがちょっとぞくっときた。


重「うそやって(笑)」

「...っは..？」

重「うそ。俺の名前なんか呼んどらん。
ぐーぐー気持ちよさそうに寝とったわ(笑)」

「何それっ...！」

重「そんな怒んな...ぅえ！？」


怒るやろなって思ったのに、Aの目から涙が溢れて、こぼれた。


重「は、何で泣くん！？」

「そん、な...アンタが、いらん嘘、っ..つくから...！」


Aは自分で涙を拭っとるけど、それでも止まらず溢れとる。
この反応は予想外すぎて俺のが慌ててまう。
え、ほんまに何で泣くん！？


重「ちょお、待てって！とりあえず泣き止めや！」

「...っ、ん、ぐっ..ふぅ...」


俺も手を伸ばしてAの涙を拭う。
眉間にシワを寄せてぎゅっと目を瞑るAの睫毛が涙で濡れて、キラキラしとる。


重「睫毛長いんやな」

「...はぁ、っ？」

重「これじゃこれ」


そう言って睫毛を摘んで軽く引っ張る。


「やーめーてー！」


Aが俺の両手首を掴んで拒んできたから、素直に従う。
むすっとした顔で俺の事睨みあげて、でも涙は止まったから、ほっとした。


重「洗濯物干す？」

「...ん」

重「その洗濯機のネットのは出さんの？」

「...あれ、私の下着なので。今日はこのまま乾燥機かけます」

重「あー...なんや、すんません」

「いいえ」


カゴを抱えてリビングへ戻るとAも黙って後ろをついてきた。

うーわ。めっちゃテンション低なっとるやん。
冗談で済ますつもりやってんけど、そうもいかん空気に自分のしでかした事の重大さを感じる。


「...さっき、すみませんでした」

重「あ、え？」


ハンガーに服をかけながらAが口を開く。


「急に泣いたりして」


いい歳して恥ずかしい。そう言うて目を合わせずにAが苦笑いを浮かべた。


重「や、俺も変な事言うてごめんな。
冗談のつもりやってんけど、全然おもろないやんな！」

「...ほんとだよ！」

重「ぶ！」


バシッて俺の顔めがけて洗濯もんを投げつけてきよって。
まだ濡れとるから見事に顔に張り付きよった。


重「...これ俺のパンツやんけ！」

「www」


パンツ丸めて投げ返したら上手いことキャッチして笑う。
さっきまで泣いてたと思えへん。

うーわ、なんや幸せや。

25→←23

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す