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「あー、そうだ。
トイレットペーパーのストックないんだった」
1人で仕事をするようになってから、間違いなく独り言が増えた。
だって、そうでもしないと本当に無音になるんだもん。
それはそれで、落ち着くんだけどさ。
外を見なくてもわかる、窓を打ち付ける強い雨の音。
さっきまで晴れてたくせに、急に降り出す雨は夏の風物詩って感じで私は割と好きだったりする。
「雨っぽいネイル、作りたいなぁ」
波紋、滴、霧雨...なんて頭にぼんやり浮かばせながら予約表をチェックする。
次の予約は17時だから、今のうちに下のコンビニで足りない物の補充と遅めのお昼、済まそう。
そう思って、鍵をとって部屋を出た。
フロントまで降りて、そのあまりの雨の勢いに、すぐ横に併設されたコンビニに行くだけなのに傘をとりに部屋へ戻る羽目になった。
いかんせん勢いが強すぎて、すぐ先が白く霞んでしまうほど。
忘れないうちにとトイレットペーパーを取って、サラダパスタとカフェラテを買ってコンビニの中のイートインスペースで食事を済ませる。
もちろん部屋で食べてもいいんだけど、この後お客様がくると思うとあまりそういう匂いは持ち込みたくないし。
生憎の雨で、換気だって満足にできそうにない。
いつもなら暇そうにしてるこの時間帯のコンビニがこんなにも慌しいのもきっとこの雨のせい。
入ってくる人達は皆濡れて、正直今更?と思ってしまうけど、揃いも揃ってビニール傘を手にしてレジに並んでる。
入店時はストックが並んでたビニール傘達は、折り畳みも含めキレイさっぱりなくなってた。
「...」
なんだか1人優雅にカフェラテ飲んでるのが申し訳なくなっちゃって、まだ半分以上あるカフェラテとトイレットペーパーを持って外へ出る。
ゲリラなんてすぐ止みそうなものなのに、今日の雨はなかなかしつこい。
まぁ私は傘あるし、職場も併設されたマンションですし。なんて余裕ぶって傘に手をかければ、遠くからまた1人、こっちに向かって走ってくる影。
うわ、足早...。
邪魔にならないよう入口から横にずれて傘を広げれば、一瞬で傘は雨を受けてビニールいっぱいに滴をつける。
なんとなく、それがきれいに見えて。
少しだけ気を逸らしてた。
「ぅわっ...!」
「っ、」
ドンってぶつかる音よりは、ズルっと滑る音の方が耳に入った気がする。
いや、正直わからない。
1番に感じたのは、ぎゅっと何かに右腕を掴まれた感覚だったから。
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のん(プロフ) - すごく引き込まれる作品でした…好きです (3月5日 16時) (レス) @page45 id: 8e0d3b7125 (このIDを非表示/違反報告)
yamayuri(プロフ) - 7色が好きで作者さんの作った作品他のも読ませていただいてます。ただ、この作品の神ちゃんがすごい好きで、、、この後の2人がどうなるか書いて欲しいです!無理だったら大丈夫です。。。検討していただけると嬉しいです!よろしくお願いします!! (2020年9月2日 4時) (レス) id: 0b520730b2 (このIDを非表示/違反報告)
のら(プロフ) - Mitarashiさん» 返事がとてもとても遅くなってしまってごめんなさい!7色と合わせて読んでいただけてるみたいで、嬉しい限りです。ロマンチックにしたいけどそういうのがバンバン浮かばない歳なので、そう言っていただけると励みになります。また別作も楽しんで頂けるよう頑張ります! (2020年5月4日 14時) (レス) id: c16071a927 (このIDを非表示/違反報告)
Mitarashi(プロフ) - お疲れ様でした!!!7色と繋がっていることが私的にはすごく嬉しくて、余計にズキュンときました!のらさんの作品はとてもロマンチックだなとニヤけながら読んでます。これからの作品も楽しみにしてますね!! (2020年3月19日 5時) (レス) id: d6da5b09b1 (このIDを非表示/違反報告)
のら(プロフ) - Mikirangeさん» コメントありがとうございます!いろいろややこしくなってしまって、それでもそんな風に言って頂けると安心します...。次回作できたらぜひ、またお付き合いください! (2020年3月13日 8時) (レス) id: 81068f83fa (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:のら | 作成日時:2020年1月21日 20時