指先に魔法、耳元に宇宙《緑》

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梨「わぁ！ありがとう！」

「いえいえ」

仕上がったネイルを見れば嬉しそうに梨沙が笑う。

梨「本当すごいよね、魔法みたい」

「え」

梨「こんなの、私じゃ絶対できないもん」

「ネイル、好きだから」



『Aの魔法で皆を幸せにしたげてや』



道具を片しながら、智洋に言われた事を思い出す。
これからも話そうって言った癖に...。


「っ」

梨「A」

「...ん？何？」

梨「私で良ければ話聞くよ？」

「え？」

梨「ここ最近、元気なさすぎ。
心配で心配で好きな人よりAにばっか連絡しちゃってんだからね！」


そういえば、ここ最近梨沙はほぼ毎日のように連絡くれて、暇があればご飯に誘い出してくれてた。


梨「粗方想像はつくよ、好きな人と何かあったんでしょ？」

「...」

梨「吐き出したい事ないの？ほら！これ飲んで！」


その手元にはさっき持ってきたお酒。
ああ、なんていい友達を持ったんだろう。


「...引くと思う」

梨「おう、引かせてみせろよ」


そんな男前な事を言ってくれる梨沙に、私は甘えた。
もちろん、相手が神山智洋ですとは言えなかったけど。


梨「え、てか今の時代ネットの出会いは割とあるあるじゃん？」


そしてこれまたケロッと言ってくれるものだから。


梨「でもさ、いきなり連絡切るのはマナー違反だね。
正直その感じはさぁ、智さんもAに気がある感じするもん」

「いや、それは」

梨「何か事情があったにしても、酷い！
バカだね、クソ野郎だ！」

「ちょ、」

梨「私の友達傷つけやがって！何か罰でも当たれ！
鳥のフン頭に落ちろ！！」

「ふっ...(笑)」

梨「でも、」

「？」

梨「嫌がってたネイルチップ自分で使ったり、表情も、雰囲気も、正直前よりずっとかわいくなったから！」

「は」

梨「それは！智さんありがとう！」


何、それ...。


梨「恋してるんだなってすぐわかったよ。
それに、恋してるAはかわいかった」

「のっぽ魔女でも？」

梨「ねぇ、知ってる？」

「何？」

梨「魔女って、魔法使えるの。
これからいくらでも変われるよ、Aが変わりたいって思えば、どんどんなりたいAになれるよ」


ああ、そんな事言いそうな人私知ってる。


「っ、ふ、...ぅう」

梨「いっぱい泣きな。
泣きはらしたらアイス食べながらラブコメ見よ！」


背中を優しく叩かれたら、いよいよ涙が止まらなくなった。



好きだった、本当に、恋してた。
綿菓子色の髪をした彼に。
生真面目で、くさい言葉をさらっと言ってしまう彼に。
透き通るようなきれいな声の彼に。

あの時、確かに私達は繋がっていた。

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