指先に魔法、耳元に宇宙《緑》

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side 神山

たぶんお互い、これが最後の通話になんかもって思っとって。
やから会話を終わらせたくないし、最後かもって思うと伝えたい事は言わなあかんなとも、思って。


『智ひ「なぁ、無理強いはせぇへんけどさ」

『うん？』


俺が被せるように言葉を続ければAは素直に聞いてくれた。


神「ネイル、ホンマはやりたいなら頑張ってみて欲しい。俺は」

『...うん』

神「仕事って嫌な事もせなあかん事もちろんあんねんけど。周りの目を気にして諦めるのは、俺は勿体無いと思う。
好きな事で金稼げるってホンマに幸せやから」

『ん』

神「Aの魔法で皆を幸せにしたげてや」

『くさい台詞(笑)』

神「うっさいわ(笑)」

『...智洋、ツアー頑張ってね』

神「おん」

『ツアーの後もずっとずっとお仕事頑張ってね』

神「おん」

『これからは、ファンとして遠くから応援してるから』


それは、やっぱりこれが最後みたいな言い方に聞こえてくる。


神「そんな、これが最後みたいな言い方せんといてや」

『だって、』

神「これからも話そう。
今度は正真正銘、嘘なしの俺とまた仲良うしてや」

『...』

神「もう俺のこと嫌になってもうた...？」


俺、かっこ悪いなぁ。
こんな風に年下の子にすがるん、情けない。
やけどそんなんしてでも、これを最後にしたくなかった。


『...嫌なわけないじゃん。
私だって、話してたいよ。
もっとずっと、智洋と繋がってたい』

神「ほんならずっと繋がっとこ、これからも」

『...うん』


ああ、Aは今どこにおるんやろ。
今すぐ駆けつけて抱きしめたい。
そう思ったら胸がぎゅぅっと痛なった。


『今日は遅いから、もう寝て？』


そう言われて時計を見たらほんまにもう、ええ時間。


神「ん、せやな。
...今日、話せてよかった」

『私も、話せてよかった』

神「A、」

『ん？何？』

神「あー...ううん、なんもない。おやすみ」

『うん、おやすみ』


空見上げて、ぽつぽつとしか見えへん星を見る。
この空の下におんねんな。
俺の好きな、女の子が。

いつか、言えるんやろうか。
彼女の手を引いて、この腕で抱き寄せて。
ちゃんと顔見ながら俺の気持ち。


神「おし、がんばろ！」


仕事も、Aの事も。
俺は気合を入れ直して、部屋に戻った。

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