指先に魔法、耳元に宇宙《緑》

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今のご時世、“神山智洋”がどんな人なのか調べるのなんて簡単だった。
少しネットを覗けば、プロフィールから今までの活動まであっという間にわかる。


この人が“tomo”なんだろうか。
私がここ数ヶ月話してる“智洋”なんだろうか。

だけどそんな事ってありえるの？
天下のジャニーズが、こんな事する？

...ジャニーズだからこそ、なのかなぁ。




年明けに智洋から届いたチャットには、未だに返事ができていない。
だって、なんて送ったらいい？

本当は神山智洋さんですよね？とでも送ればいいのかな。


智洋からのチャットを眺めていたら、見計ったように着信が表示された。
一呼吸置いてから耳元にあてる。


神『もしもしぃ』

「...もしもし？」

神『A？』

「うん。...酔ってる？」


智洋の声がいつもよりなんだか、ふわふわしてる。


神『それ、さっきもAに言われたわ』

「え？」


いや、そんなはずないんだけど。


神『さっき、Aの夢見てん』

「は」

神『やけど夢やったから。
ちゃんと本人の声、聞きたくなってん』

神『...俺、Aの声好きなんよね』


ふふふ、なんて笑う声が聞こえて、私はすっかり本当の事を聞くタイミングを逃してしまった。
逃したというか、それどころじゃなくなった。

顔が、熱すぎて。


神『あれ、聞こえとるー？』

「...聞こえてる、よ」

神『ほんならちゃんとお返事せな、アカンやろ』

「だって」

神『だって何よ』

「...なんでもない、ごめんなさい」

神『ふふ、ええよぉ』


この、酔っ払いめ。


神『なーあー』

「何？」

神『明けましておめでとうございます』


酔っ払いの癖して真面目か(笑)


「明けましておめでとうございます」

神『今年もよろしゅうお願いします』

「よろしくお願いします」


きっと智洋は向こうで律儀に酔った頭で正座でもして頭をペコリと下げているんだろう。


「あ、ネイル。もうしちゃった？」

神『してへん！してへんよ！A探す言うてたから待ってたんやんか！』

「うわ、まじか。
何パターンか探してみたから、好みがあればいいんだけど」


送るねって一度スマホを耳から離して画像を送る。


「見れた？」

神『見れた！あかん、俺これ、即決』

「最後の2枚？」

神『そう！』

「そんな気がした」

神『俺の事ようわかってるなぁ』

「...まぁ、ね」


そろそろ寝るねって通話を切って溜息を吐き出した。
送った画像は全部で4枚。


私の知ってる“智洋”が好きなそうなの2枚と、ネットで調べた“神山智洋”が好きそうなの2枚。

彼が選んだのは後者だった。

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