nine ページ10
『あれ、』
あの日から約１週間。私の傷はだいぶひき、カサブタになってきていた。
『ね、伊作、塗り薬は？』
毎日のように傷に塗り薬を塗るが、今日は見当たらない。
「すまないA…あれはコトハザトと言って貴重な薬草なんだ…そうそう手に入るようなものじゃなくて…代わりにコトハザトと似たユリソウを使ってくれ」
渡されたのは、小さな壺に入ったユリソウの塗り薬。
『ありがとう…なんか、ごめんね』
この時代、貴著なものを買うということは、相当な負担がかかってしまう。だから、罪悪感が凄い。
「僕はごめんねじゃなくてありがとうの方が嬉しいかな」
『っ…ありがとう！』
「うん！」
あぁ、その笑顔に惹かれる。やっぱり好きだな。伊作。
「そ、それは、心の声？」
『へ？』
一気に顔が熱くなる。まさか、心の声出てた？うぁ…恥ずかしい。
『ご、ごめん！』
気まずくなって医務室を出ると、利吉さんと鉢合わせした。
『こ、こんにちは…あの！先日は本当にありがとうございました！おかげで助かりました』
私がそう言うと、利吉さんはニコッと笑ってくれた。とりあえず伊作のことで顔が赤いのですぐに離れた。
私は知らなかった。利吉さんが立ち聞きしていたことに。
「…参ったな…」
利吉sid
Aの様子を見に行こうと学園に行った。そして医務室の前に来た途端、聞きたくもないものが聞こえた。
『やっぱり好きだな…伊作…』
「そ、それは、心の声？」
嫌でも二人の間の雰囲気が伝わってしまう。あぁ、嫌だ。
私はあの日から、彼女が魅力的に見えてしまった。いわゆる恋というものだ。
「あれ、利吉さん？」
「や、やぁ、伊作くん」
私は伊作くんに挨拶すると、中に入れてもらった。そして、さっきのことを言われる。
「利吉さん…僕、Aに好き、と言われました…」
「そうか…」
知ってるよ。聞いてたし。
「でも、僕恋仲の人がいるんです…」
「えぇ！？誰？」
伊作くんは照れ臭そうにこう言った。
「…くノ一教室の、カヤ(オリキャラ)ちゃんです」
という事は…Aは片思いって事になるか…。なぜか少しほっとしている私がいた。
「成る程ね…」
Asid
聞いてしまった…。好きと言ったことを謝ろうと伊作のところに行こうとしたら…聞いてしまった。
伊作「僕、恋仲の人がいるんです…」
伊作、恋仲の子、いたんだ。
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作者名：朝霧 | 作成日時：2022年3月21日 17時
