きみじゃなくてもいいのにきみがいい。 (ページ11)

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〜 A side 〜

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昔から一匹狼で常に一人でいた颯太と休み時間になれば友達と他愛のない話で延々と盛り上がっていた私。
AちゃんからA 、Aからお前。お前から … なあ。徐々に颯太は私の名前を口にしなくなっていった。私の嫉妬心を煽るかのようにわざと他の女の子を優先するし、私のあの手この手はいつも颯太には適わない。振り回されてばっかりなのに、嫌いになりたいのに、どうしても離れられないから苦しいの。私がどれだけ「会いたい」を口先に並べても重なるものといえばただ一つ、痛みだった。颯太は多分弱くてダメなヒト。颯太と一緒に居ても幸せになんてなれない。

　

｢ん … さっき私のこと好きでも嫌いでもないって言ってたけど、さ … いくら嫌いになってもいいから、私のものになんてならなくてもいいから … 他の子のとこには行かないで、」

　

　

キスの合間の弱音に勿論返事はない。颯太の唇が離れて、さっきまで忘れていた息の仕方を再び思い出す。少し前髪のかかった彼と目が合う。颯太はしっかりと私を見詰めていた。… ねえ颯太、どうして？どうして、私じゃだめなの？私じゃなくてもいいのに私じゃないと嫌で、颯太を好きになればなるほど惨めな女に成り下がっていく自分が嫌いで、私の気持ちを知っていながらも知らないフリをする颯太と同じくらい憎らしいの。

　

颯「いっそのこともう一生俺っていう存在で苦しめよ」

「 … 最低、ゴミ、カス、クズ ……… 馬鹿、」

　
　
　

　
そう言うと颯太は微笑んでどちらからともなくもう一度キスをした。吐息の熱に浮かされながら微かに聞こえた言葉と、キャミソールとショートパンツと下着を乱雑に脱ぎ散らかしてしまえば、私はまた、颯太を好きになってしまうんだろう。私の身も心さえも軽々しく翻弄してみせる彼との間に言葉は要らなかった。

　

　

　

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