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補習が終わって、
プリントをかばんに入れた。
拓実が後ろからAの顔を覗き込む。
「A、帰るん?」
「うん。帰る。」
「そうなんや。」
「川西くんは?」
「俺、もう一個。補習あんねん。英語。」
「そっか。」
Aがかばんのチャックを
端まで締めると、
拓実がいかにも悲しそうな顔をした。
Aは捨てられた子犬のような瞳を
見捨てることはできなかった。
「待っとく?
私、図書室で勉強しよかな。」
「え?いいの?」
拓実の顔がぱあっと晴れる。
「待っててくれるん?
待っててほしい。一緒に帰ろう!」
「じゃあ、図書室にいるな。」
「おっけ、また終わったら連絡するわ!」
拓実は嬉しそうにかばんを提げて、
手に持った携帯を
Aに向かって振りながら、
浮き立った足取りで教室を出た。
拓実は感情が顔に出やすい。
クラスのみんなにイジられて嬉しいときは、
いたずらっ子のようにニシシと笑う。
でも、イジられすぎると
ちょっといじけた顔をする。
野球の時は
絶対に打ってやるという真剣な顔つき。
Aの隣にいるときは
照れくさそうに笑う。
Aと一緒にいるのをからかわれると、
『うるさいなぁ』と言いながら、
うつむいて桃色に染まった顔を隠す。
ころころ変わる表情に
自然と人々の視線が集まる。
Aも例外じゃない。
拓実の気持ちがAの自惚れじゃなくて
本物なら、自分から勇気を出して
一歩踏み込めば、
きっとAは幸せになれる。
でも、
前へ踏み出す足を踏みとどめて、
引き返すもう一人の自分が
心の内に存在する。
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ののん(プロフ) - りんさん» コメントありがとうございます!色々あれやこれや悩んで試行錯誤しながら書いておりますので、そう言っていただけると、本当に励みになります!りんさんのコメント読んで嬉しくてニヤけちゃいました笑 (2021年4月29日 1時) (レス) id: b70c73754c (このIDを非表示/違反報告)
りん(プロフ) - こんにちは。瑠姫くんの12時〜シリーズからののんさんのお話のファンになったのですが、このお話ほんっっっとに好きです、、、。本物の小説を読んでるみたいにドキドキしてしまいます。いつも素敵な物語をありがとうございます(T^T) (2021年4月28日 1時) (レス) id: a55fc0b198 (このIDを非表示/違反報告)
ののん(プロフ) - はっぱさん» コメントありがとうございます(^^)全部読んでくださったんですか?ありがとうございます(T_T)期待に添えるお話を書けるかどうか不安ですが、最後までお付き合いいただけると嬉しいです! (2021年3月31日 23時) (レス) id: b70c73754c (このIDを非表示/違反報告)
はっぱ - ののんさんのお話全て読ませていただきました!今回も推しの純喜くんが出るのでさらに楽しみです! (2021年3月31日 13時) (レス) id: ede0d803b5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ののん | 作成日時:2021年3月28日 23時