1 間に合いそう ページ1
シャオロンさんとコネシマさんの欲しいものも分かったし、ひとらんらんさんで最後かな。
「〜♪」
庭へ出ると、鼻歌を歌いながら農作業をするひとらんらんさんの姿が見えた。
農作物を潰してしまわないよう、慎重に畑へ足を踏み入れた。
ガサガサ、と草の揺れる音。
ひとらんらんさんがこちらを振り返った。
「あぁ、Aちゃんか…びっくりした…」
この人は確か結構な怖がり…だった気がする。
〔驚かせてしまってごめんなさい〕
「大丈夫だよ。しょうがないしょうがない。」
そう言って私の喉元を一瞥した。
妙に過度な心配に、私は困ったように笑った。
「で、どうしたの？」
〔ひとらんらんさんは何かほしいものってありますか？〕
「俺？うーん…」
ワクワクしながら聞く。
「じゃあおつかい頼まれてくれる？」
〔はい！もちろん〕
「城下町にある花屋さんでね、この花の種を買ってきてほしいんだ」
私の持っているホワイトボードにスラスラーっと花の名前を書いた。
〔わかりました、メモしておきますね〕
「あぁ…あとさ、ひとらんらんさんって長いでしょ。ひとらんでいいよ」
〔ひとらん〕
〔さん〕
つい付け足してしまった。
「そうだね、急には困るよね。ゆっくりでいいよ」
ふふ、と柔らかく笑いながら発された言葉は本当に穏やかで。
この人は本当に軍人なのだろうかと、心の中で一瞬の疑いが生まれた。
「それじゃ、俺養鶏場のほういくね」
ひとらんさんはまた穏やかな笑顔で去っていった。
さて、聞ける人の分は聞けた。問題は残りの4人。
エントランスホールの端にあるベンチでうーんうーんと考える。
「あれ、何してんの？」
〔シャオロンさん〕
シャワーあがりか、タンクトップにいつものズボン、肩にはタオルがかかっていて、いつものニット帽をしていない。
〔皆さんにほしいものを聞いて回ってたんですが…〕
「あー、俺らにも聞きに来てたやつな」
〔はい。でも今外国に出向いているグルッペンさんたちには聞けないからどうしようかと〕
「うーん。」
〔いつ頃帰ってくるとかって知りませんか？〕
「たしか明日の朝ちゃうかったかな。」
〔なら間に合いそうです…よかった…〕
「？いつまでとかあんの？」
〔兄さんが明後日にまたここを出るそうで…〕
「なるほど」
数秒の沈黙。
最初にアクションを起こしたのはシャオロンさん。
「Aちゃんは優しいなぁ。」
小さい声だが、たしかにそう聞こえた。
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作者名：のの | 作成日時：2018年8月11日 16時
