ハジマリ。 ページ12
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橋｢着きました｣
『わ、……2人暮らしなのに』
連れてこられたお家は、2人で住むには広めで大きい。
……御屋敷とかじゃないだけいいのかな、なんて思っちゃったりして。
呆然と眺めていると、横から声をかけられる。
『織山くん、』
｢…………これから、よろしく｣
『あ、うん、』
話慣れてないから、会話が恐ろしくぎこちない。
一緒に暮らすといったってどんな風に接すればいいのか。
分からないことだらけだ。
颯｢おり〜｣
｢ん？どしたのうっちー｣
会話が止まった時の間が長くてしどろもどろしていたら。
颯太くんが織山くんを呼ぶ声。
…そういえば、知り合いだったんだっけ。
橋｢Aさん｣
『わっ、……びっくりした、』
橋｢ふふ、ごめんなさい｣
橋本さんは、急なところがあるけど
人に好かれるタイプの人なんだろうな。
話してるとそんな感じがする。なにより笑顔が柔らかい。
橋｢ここ気に入りました？｣
『…まぁ、いいお家ですね』
橋｢本当はもう少し豪華になる予定だったんですけど(笑)｣
『え？』
橋｢あ、いや、……尚大さまが、｣
織山くんが、気を利かせてなにか言ってくれたらしく、
御屋敷で住むのは免れたみたい。
気を利かせたのか、本人が単純にそうしたかったのかは分からないけれど。
颯｢A〜！｣
『わ、……颯太くんどうしたの急に』
橋本さんと話してたら、颯太くんに呼ばれて
急に暗くなる視界。
この幼なじみのひっつき癖は昔から変わらないらしい。
颯｢………｣
『？そ、たくん？』
｢ん〜！｣
『ちょっ、力込めすぎ(笑)』
距離感も加減も普通と違うのが颯太くんぽいというか。
なんというか。
笑って受けると彼も笑い声が漏れる。
颯｢ふふ〜………絶対譲らない｣
『なんかいった？』
颯｢ん〜ん、こっちの話｣
｢Aさん、｣
『え？、』
この前は名字だったような気がして。
いきなり距離を詰められたみたいで戸惑って。
聞き間違いかと思って彼に聞き直す。
｢……いやこれからあんたも織山になるから｣
『あ、』
颯｢まだまだ先の話だけどね！｣
｢ま、なると思うから名字呼びやめようね｣
『…頑張ります』
まずは名前を呼ぶところから？
この人との婚約生活…という名の
ふたり暮しが始まる、みたい。
続く
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作者名：祐 | 作成日時：2022年9月12日 2時
