介抱 ページ28
トイレに近づくと、其処からはニンニクに対する恨みつらみの様な言葉や、啜り泣く声が聞こえた。
アリスは本当に此処にAがいるのか訝しんだが、其処から聞こえる声は間違いなくAのものであった。
女子トイレに入ると、個室の扉を閉める余裕すらなかったのか、Aがトイレの前に屈んで吐瀉物を吐き出しているのが見えた。
「A、大丈夫なの？」
声を掛けられたAは少し肩を揺らした。
その背中は、普段の彼女からは想像できないほどに弱々しくて、小さなものだった。
Aは良い意味でも悪い意味でもホグワーツ内で有名な生徒の一人だ。あまり交流のない日本の魔法界からやってきたのも理由の一つだし、何よりも彼女の優秀さ、立ち居振る舞いや落ち着いた言動は、随分と彼女を『ミステリアスな女子生徒』として引き立たせていた。
そんな女子生徒が、自分の目の前ですすり泣きながらニンニクの匂いにやられて吐き出している。
アリスはなんだか、見てはいけない物を見てしまった様な気がした。実際Aもこんな所を見られたくなんてないだろう。
それでもアリスはAの直ぐ近くへ寄って、その背中を摩った。
「アリスちゃん、先に授業、行ってもよかったのに……うっ……」
「ほら、喋らなくても良いから、吐き気が治るまで吐くことに専念してなさい」
「ご、こめ……ゲホッ、うえぇぇ……」
「……もう」
アリスはAの吐き気が治るまで背中を摩っていたし、もう構っていられなくなったのか、AはAで再びニンニクへの恨み言を呟き始めた。
「二郎系ラーメンの上にたっぷり乗っているニンニクは美味しそうな匂いだって錯覚するのに」だとか訳の分からない事を言い始めた時は、アリスも堪えきれずに笑い始めた。
＊
「大変ご迷惑をおかけ致しました……」
「別に良いわよ。私だって課題を少し手伝って貰ってるし」
口を濯いでスッキリしたのか、幾分か顔色の戻ったAはアリスに謝り倒した。
「それにしても、随分と人が変わるのね。もしかしてこっちが素だったりするの？」
その言葉にAはすっと明後日の方を見る。
あ、こっちのが素なのね。
アリスはそう考えながら、スネイプから預かった小瓶を取り出してAに手渡した。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 73人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
息抜き(プロフ) - 真昼さん» コメント有難う御座います！ 良いですよねぇ、ハリポタとチェンソーマン。 (2023年1月12日 22時) (
レス) id: aff75be4a1 (このIDを非表示/違反報告)
真昼 - 好きな物語がクロスオーバーされていて、嬉しかったです！ (2023年1月12日 17時) (レス) id: 3174c03de1 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：息抜き | 作成日時：2022年12月17日 17時
