32日目 ページ32
「…そんな泣きそうな顔するなよ、別にそんな発言1つで傷つかねぇから。」
「ほら、俺って”最強”だし?」
俺を慰めようとしたのか、悟はそう言った。
本当に傷つかないなら、そんな顔、しないはずなのに…。
『”最強”だって、心は傷つくでしょ。確かに悟は最強かもしれない。でもさ、完璧な人間なんて居ないんだよ?』
『何気ない言葉で傷ついたり、人に不信感を抱いたりもする。それは生きてく上で当たり前のことなんだし、恥ずかしくなんてないんだよ。』
『だから…俺にはありのままの悟を見せてくれると嬉しいな。俺も、そうするから。』
悟は呪われている。
生まれてきた頃から言われ続けてきたであろう【”最強”】という言葉に。
一言最強と言われれば聞こえはいいかもしれないが、その言葉をずっと言われ続けるとなると話は別だ。
最強だから、最強なら、そんな言葉が人の心を縛り続ける。
それ故に悟は人前で泣くことや、弱っている姿を見せることを嫌うのだろう。
最強だから、そんな姿を見せてはいけないと。
意識はしてなくとも、無意識にそう思ってしまっているんだと思う。
『悟、俺を信じて?』
「そんなの、とっくに信用してる!」
「信用してるから。だからこそ、こんな姿見せたくねぇんだよ…!」
「嫌われたくない。」そう言いながら、綺麗な瞳を潤ませ涙を落とす。
嫌うわけ、ないのに。
悟は俺の事を信用していると言ったが、そういう面では信用しきれないのだろう。
『嫌うわけ、ないでしょ?』
『何年一緒にいたと思ってるの?今更そんなことで嫌いになんてならないよ。』
俺に出来る事はただ一つ、悟の支えになってあげることだけだ。
『大丈夫だから、信じて?』
未だに涙を流し続ける悟に手を伸ばし、抱き寄せる。
前に、俺とくっついていると落ち着くと言ってくれていたことを思い出しての行動だった。
五条家ではこうして抱きしめてくれる者も居ないんだとか…。
1人で生きていける人間なんていないのに、悟はある意味小さい頃から1人で生きることを強いられていた。
本来注がれるはずだった愛情が注がれないのなら…。
なら、俺がその分の愛情を注ごう。
悟が、幸せになれるように。
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作者名:楓さん x他1人 | 作成日時:2021年3月2日 16時