story84 ページ45
「それ?」
「ええ」
沖矢さんは頷いて、お茶が半分入った透明なグラスを傾ける。
カランコロン、と中に入っていた氷が揺れた。
「見た目も雰囲気もまるで違うのに_____……懐かしい。お人好しで、無邪気なところが……」
沖矢さんはかすかに目を見開いて、じっと私を見つめる。
でも彼が今見ているのは私ではなく、違う別の誰かだった。
それに意味のわからない寂しさを覚えて、私はふい、と横を向いた。
「私は私です。他の人間と重ねないで。不愉快です」
「そうですね。すみませんでした」
いつもの表情に戻って、沖矢さんは優しく笑った。
「沖矢さん、協力してくれますか?」
改めて尋ねたら、沖矢さんは頷いてくれた。
「出来る限りのことは」
「本当ですか!? 心強いです」
「初めから手伝いますと言っていたてしょう」
まあ……ね。でも沖矢さん、めちゃくちゃ胡散臭かったし。まあそれはお互いさまか。
「今晩、お酒でもどうですか」
……またかよ。まあ別にいいけどさ。どうせ酔わないし。
いやでも酔う酔わないに関係なく、沖矢さんと飲んでると過ちが起きそうで怖いんだよなあ……。
「いいですけど。変なことするのはやめてくださいね」
「はい? 変なこと?」
「急に意味のわからない質問をしたり、抱きしめたり」
「そんなことしましたっけね」
すっとぼける沖矢さん。むかつく!!
「ところでAさん、こんなものを園子さんから頂いたんですけど」
沖矢さんが、胸ポケットから細い紙切れを二枚取り出し、机の上においた。
「え? これ、なんです?」
「トロピカルランドのチケットですよ。なんでも園子さんが彼氏と行く予定だったそうなのですが、急遽キャンセルされてしまったとかで」
へえええ。園子ちゃんに彼氏とかいたんだ?
「ラッキーじゃないですか。誰と行くんです?」
「……この会話の流れで、その質問をしますか」
え? どゆこと?
「園子ちゃんと行くんですか?」
私の問いかけに、盛大なため息をつき、メガネの上から目頭を抑える沖矢さん。
普通にカッコイイ。
「Aさんをお誘いしようかと思ってたんですよ」
へっ?? 私?
「えー……私ですか?」
「はい。ご都合悪いですかね」
「いや、別にそんなことはないですけど。私なんかと行って楽しいですか?」
私の戸惑い顔を見て、沖矢さんは、ふっと笑った。
「楽しいですよ……きっと、ね」
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みそ - 沖矢さんにめっちゃキュンキュンされます…この作品を作って下さって本当にありがとうございます!!9も頑張ってください! (2018年2月12日 0時) (レス) id: f05c3c7162 (このIDを非表示/違反報告)
海星(プロフ) - 百合さん» ありがとうございます!! 頑張って更新します! (2017年12月13日 7時) (レス) id: b25d192faf (このIDを非表示/違反報告)
百合 - すごく面白いです(*^-^*)続きが気になります!頑張って下さい!(*´∀`) (2017年12月12日 23時) (レス) id: 664152f9a6 (このIDを非表示/違反報告)
海星(プロフ) - ムーンさん» 毎日読んでくださりありがとうございます!! 一位なんて嬉しい!! これからも頑張ります! (2017年12月9日 21時) (レス) id: b25d192faf (このIDを非表示/違反報告)
ムーン(プロフ) - 毎日毎日更新されたのを楽しみにしながら見てます!この作品今のところ私の好きな名探偵コナン夢小説1位です!!これからも続編頑張ってください! (2017年12月9日 20時) (レス) id: 257ddb25d6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:海星 | 作成日時:2017年12月6日 23時