story68 ページ29
「そうか。ご苦労だったな」
風見が何かを尋ねる前に電話を切り、静かな車の中で、安室は先ほどの彼女を思い浮かべた。
裏組織の人間ながら、一般人のように死体に怯える彼女。死んだはずのアカイシュウイチを、自分と同じく探し求める彼女。
彼女が本名だと言った亜土村藍里という名前。
ここまでくると、その名前すら本名かどうか怪しいものだ。
七瀬A、亜土村藍里、それとも……?
彼女もまさかトリプルフェイスなのか?
通りすぎる車の震動を身に感じながら、安室はかすかに眉をひそめた。
安室side終了
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波土さんのリハーサル事件があったあと、沖矢さんにあのままお姫様抱っこで工藤邸に連れて帰られた私は、それから数日、高熱を出して寝込んでいた。はい。
多分、突然異世界にトリップして、色んなことが目まぐるしく起こって、私自身気がつく暇もなかったけど、相当疲れていたのだと思う。
それが、波土さんの死体を見たことで一気に溢れだしたのだろう。
高熱におかされた私を、沖矢さんはかいがいしく世話してくれた。
「Aさん、卵粥を作ってみたんですが……食べれそうですか?」
熱にうなされた意識が、沖矢さんの落ち着いた声で夢からゆっくりと舞い戻ってくる。
涙でにじんだ瞼を開けると、エプロンをつけた沖矢さんが、小さなお鍋を持って立っていた。
「あ……お、……きや…さ、ん」
「薬がそろそろ切れてきた頃かもしれませんね。ご飯を食べたら薬を飲みましょうか」
「だ、いじょ……ぶで……す」
「はいはい。分かりましたから。お粥を食べてくださいね」
「ど…して……も、食べ…な、…いと…だ…め…で、す?」
「治したかったら食べてください」
沖矢さんが、私の肩を抱きかかえて、ベッドから起こしてくれた。
「ほら、口を開けてください」
え……なんで?
なんで沖矢さんがスプーン持ってるの? なんでお粥すくってるの?
なんで、あーん、みたいな感じになってるの?
「あ……ん、え?」
「はい、ほら開けて」
「えっ……なん、で……」
口を開けた瞬間に、そのチャンスを逃さず私の口にスプーンを突っ込む沖矢さん。
「はふっ…ふ、う、あ」
「熱いので気をつけてくださいね」
いや、もう口の中に入ってるから気をつけようもないんですけど。相変わらず沖矢さんはメチャクチャだ。
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みそ - 沖矢さんにめっちゃキュンキュンされます…この作品を作って下さって本当にありがとうございます!!9も頑張ってください! (2018年2月12日 0時) (レス) id: f05c3c7162 (このIDを非表示/違反報告)
海星(プロフ) - 百合さん» ありがとうございます!! 頑張って更新します! (2017年12月13日 7時) (レス) id: b25d192faf (このIDを非表示/違反報告)
百合 - すごく面白いです(*^-^*)続きが気になります!頑張って下さい!(*´∀`) (2017年12月12日 23時) (レス) id: 664152f9a6 (このIDを非表示/違反報告)
海星(プロフ) - ムーンさん» 毎日読んでくださりありがとうございます!! 一位なんて嬉しい!! これからも頑張ります! (2017年12月9日 21時) (レス) id: b25d192faf (このIDを非表示/違反報告)
ムーン(プロフ) - 毎日毎日更新されたのを楽しみにしながら見てます!この作品今のところ私の好きな名探偵コナン夢小説1位です!!これからも続編頑張ってください! (2017年12月9日 20時) (レス) id: 257ddb25d6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:海星 | 作成日時:2017年12月6日 23時