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「そんな言い方ないだろ。事情もよく知らねえのに」
「殴ったのはわたしじゃない」
「ほら見てみろ、Aちゃんだってそう言ってる」
優しい諸伏くんは、わたしをかばってくれた。しかし零くんは納得しなかったようだ。依然、わたしを見る冷たい目は変わらない。
「そんな顔腫らして言っても、誰も信用しないと思うけどな」
何も言えなくなったわたしに、「ヒロ、ちょっと話がある」と言い残し、さっさとその場を立ち去る零くん。
「ご、ごめん、ほんとに……」
諸伏くんは心底申し訳なさそうな顔をしてわたしに手を合わせると、零くんの後を追って、教室を出て行ってしまった。
ぽつんと取り残されたわたしは、なんだか妙に突き刺さる視線を感じてそろそろと顔をあげ周囲を見渡す。
同じグループの人たちが、わたしを見つめてはヒソヒソと小声で何かを囁きあっている。すー、と体の芯から寒気が這い上がってくるのを感じた。
わたしは顔をあげられなくなって、再びうつむいた。
制服のスカートの上で固く拳を握りしめる。痛いくらいに握りしめる。それでもぶるぶると震えは止まらなかった。
もう、噂になってるけど。
駒沢だろ。
零くんの声が耳で反響する。
見てはいけないものを遠巻きにするように、みんながわたしを眺めている。
友達がいないどころの話じゃなくないか、これ。
心の中で苦笑していたら、諸伏くんと零くんが教室に帰って来た。みんなの注意は、わたしから美貌の青年へと移り、女の子たちがかすかに黄色い悲鳴をあげて、零くんを見つめる。
諸伏くんはさっきまでわたしの隣に座っていたのに、零くんに言われて遠くの席に腰かけた。
申し訳なさそうにこちらをチラチラ見る諸伏くんに、さっと視線をそらし、配られた資料を読んでいるフリをする。
やっぱ、うまくいかない。
これもだいたい、いつものことだ。
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あやちゃん(プロフ) - 海星さん» 面白くて何回も読ませてもらっています!続きがくるのを楽しみにして待ってます! (2020年3月27日 20時) (レス) id: 60d90b2065 (このIDを非表示/違反報告)
桜 - あの、ずっと更新停止されてますが大丈夫ですか? (2020年1月13日 7時) (レス) id: 73a2611a5f (このIDを非表示/違反報告)
桜 - そうだったのですか…。安心いたしました!テスト頑張ってください^^ (2019年11月27日 18時) (レス) id: 73a2611a5f (このIDを非表示/違反報告)
海星(プロフ) - 桜さん» 心配していただいて、ありがとうございます…今テスト中で。更新がゆっくりになってます。すみません! (2019年11月27日 16時) (レス) id: 4bcc115d21 (このIDを非表示/違反報告)
桜 - 最近、更新がありませんが体調など大丈夫でしょうか?とても心配です…… (2019年11月27日 0時) (レス) id: 73a2611a5f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:海星 | 作成日時:2019年11月9日 13時