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わたしは一言だって、松田くんがいじめてくるなんて言った覚えはないし、迷惑だとも話していない。
「ちょ、ちょっと白鳥さん…」
思わず彼女を制そうとするが、白鳥さんはさらにマシンガンのように松田くんに攻撃する。
「あなた粗暴だし、態度も不真面目だし、駒沢さんに嫌われてるのよ。これ以上彼女に余計なちょっかいをかけるなら、わたしが許さないわ。駒沢さんだって、あなたなんかと喋りたくないの」
みんなが驚いたようにわたしを見つめた。
ちがう、と言う言葉が喉まで出かかった。
そんな風には思ってない。
松田くんのこと、わたしは………。
「………おい、ゴマ、こいつの言ってること本当なのか?」
「こいつじゃなくて、白鳥よ」
「うるせえよ、俺は駒沢に聞いてんだ」
ぴしゃりと白鳥さんの言葉を切り捨てて、松田くんがわたしを見る。
初めて名前を呼ばれて、ぴくりと肩が震えた。
おい、と松田くんがこちらをじっと見つめてくる。睨んでいるわけではなかったが、答えないことを許してくれそうにはなかった。
「わ、わたしは……」
「迷惑よね?」
「そうなの、Aちゃん?」
萩原くんが落ち着いた声で尋ねてきた。そうよ、と白鳥さんが口を挟むが、「黙れっつってんだろ」と松田くんに睨まれて、さすがに口を閉ざした。
じっと六人に見つめられる。
わたし、友達だと思ってるから。という白鳥さんの柔らかい声が、喉にぐるぐると布のように硬く巻きついて、ひどく苦しかった。
それと同時に、ある風景がぽつぽつと浮かんできた。
桜が舞い散る、大通り。
わたしに殴りかかろうとする男を組み伏せる松田くん。わたしが泣いているのを見て、諸伏くんに喧嘩を売ろうとした松田くん。身体測定でいちいち騒いでいる松田くん。持久走で倒れかけたわたしを、支えてくれた松田くん。
この前、医務室からの帰りに、そうっと左腕に触れた温もりも。
それを思い出した瞬間、自分でも気がつかないうちに、震える声が漏れていた。
「……い、言ってない。そんなことは……」
「こ、駒沢さん!」
「し、白鳥さん……心配してくれてありがとう。でも、松田くん、そんな悪い人じゃないから……ほんと…大丈夫だから」
だから、松田くんのこと、そんな風に言わないでほしい。
そう静かに、しかしはっきりと言い切ると、白鳥さんが息を飲む気配がした。
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あやちゃん(プロフ) - 海星さん» 面白くて何回も読ませてもらっています!続きがくるのを楽しみにして待ってます! (2020年3月27日 20時) (レス) id: 60d90b2065 (このIDを非表示/違反報告)
桜 - あの、ずっと更新停止されてますが大丈夫ですか? (2020年1月13日 7時) (レス) id: 73a2611a5f (このIDを非表示/違反報告)
桜 - そうだったのですか…。安心いたしました!テスト頑張ってください^^ (2019年11月27日 18時) (レス) id: 73a2611a5f (このIDを非表示/違反報告)
海星(プロフ) - 桜さん» 心配していただいて、ありがとうございます…今テスト中で。更新がゆっくりになってます。すみません! (2019年11月27日 16時) (レス) id: 4bcc115d21 (このIDを非表示/違反報告)
桜 - 最近、更新がありませんが体調など大丈夫でしょうか?とても心配です…… (2019年11月27日 0時) (レス) id: 73a2611a5f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:海星 | 作成日時:2019年11月9日 13時