検索窓
今日:78 hit、昨日:105 hit、合計:827,891 hit

43 ページ44

.

 わたしは一言だって、松田くんがいじめてくるなんて言った覚えはないし、迷惑だとも話していない。

「ちょ、ちょっと白鳥さん…」

 思わず彼女を制そうとするが、白鳥さんはさらにマシンガンのように松田くんに攻撃する。

「あなた粗暴だし、態度も不真面目だし、駒沢さんに嫌われてるのよ。これ以上彼女に余計なちょっかいをかけるなら、わたしが許さないわ。駒沢さんだって、あなたなんかと喋りたくないの」

 みんなが驚いたようにわたしを見つめた。
 ちがう、と言う言葉が喉まで出かかった。
 そんな風には思ってない。

 松田くんのこと、わたしは………。

「………おい、ゴマ、こいつの言ってること本当なのか?」

「こいつじゃなくて、白鳥よ」

「うるせえよ、俺は駒沢に聞いてんだ」

 ぴしゃりと白鳥さんの言葉を切り捨てて、松田くんがわたしを見る。

 初めて名前を呼ばれて、ぴくりと肩が震えた。
 おい、と松田くんがこちらをじっと見つめてくる。睨んでいるわけではなかったが、答えないことを許してくれそうにはなかった。

「わ、わたしは……」

「迷惑よね?」

「そうなの、Aちゃん?」

 萩原くんが落ち着いた声で尋ねてきた。そうよ、と白鳥さんが口を挟むが、「黙れっつってんだろ」と松田くんに睨まれて、さすがに口を閉ざした。

 じっと六人に見つめられる。

 わたし、友達だと思ってるから。という白鳥さんの柔らかい声が、喉にぐるぐると布のように硬く巻きついて、ひどく苦しかった。
 それと同時に、ある風景がぽつぽつと浮かんできた。

 桜が舞い散る、大通り。
 わたしに殴りかかろうとする男を組み伏せる松田くん。わたしが泣いているのを見て、諸伏くんに喧嘩を売ろうとした松田くん。身体測定でいちいち騒いでいる松田くん。持久走で倒れかけたわたしを、支えてくれた松田くん。
 この前、医務室からの帰りに、そうっと左腕に触れた温もりも。

 それを思い出した瞬間、自分でも気がつかないうちに、震える声が漏れていた。

「……い、言ってない。そんなことは……」

「こ、駒沢さん!」

「し、白鳥さん……心配してくれてありがとう。でも、松田くん、そんな悪い人じゃないから……ほんと…大丈夫だから」

 だから、松田くんのこと、そんな風に言わないでほしい。
 そう静かに、しかしはっきりと言い切ると、白鳥さんが息を飲む気配がした。



.

44→←42



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (332 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
920人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

あやちゃん(プロフ) - 海星さん» 面白くて何回も読ませてもらっています!続きがくるのを楽しみにして待ってます! (2020年3月27日 20時) (レス) id: 60d90b2065 (このIDを非表示/違反報告)
- あの、ずっと更新停止されてますが大丈夫ですか? (2020年1月13日 7時) (レス) id: 73a2611a5f (このIDを非表示/違反報告)
- そうだったのですか…。安心いたしました!テスト頑張ってください^^ (2019年11月27日 18時) (レス) id: 73a2611a5f (このIDを非表示/違反報告)
海星(プロフ) - 桜さん» 心配していただいて、ありがとうございます…今テスト中で。更新がゆっくりになってます。すみません! (2019年11月27日 16時) (レス) id: 4bcc115d21 (このIDを非表示/違反報告)
- 最近、更新がありませんが体調など大丈夫でしょうか?とても心配です…… (2019年11月27日 0時) (レス) id: 73a2611a5f (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:海星 | 作成日時:2019年11月9日 13時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。