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「ヒカル、君は本来のAの人格に割り込むようにして形成されたに過ぎない……。
君が……いやAが記した日記の口調がひどく幼かったのは、君が失神する短時間にしか人格の現れることができないAの知的成長が、その分遅れていたからだ。
俺の推理を言おう。
おそらく工藤Aがこの世に生まれたとき、わずかに前世の記憶を持っていた。赤ん坊が母親の腹の中にいたときの記憶を覚えているとか、前世の記憶があるというのは、科学的にこそ証明されていないが、よく聞く話だ。一種の意識的な錯誤かもしれない……しかしそれらは大抵すぐ、本来の人格に打ち消され、赤ん坊の記憶から消し去られる。
工藤Aの場合も、そうなる、はずだった。
だがそれを、もう一人の人格である君は拒否した。
親の愛情を知らなかった君に、工藤夫妻は本当の愛を与えてくれた……。君はそれを失いたくないと思った。
今度こそ、自分のものにしてやる、と」
「ちがう……おれは……おれは……っ」
「君は工藤Aの人格を乗っ取った……むろん、無意識のうちにだろう。本来の純粋なAという人格を抑圧し、昔真嶋ヒカルだった工藤Aという、新しい人格を作りだした。
だが、それはいずれ崩壊を始める……。
当然だ。お前は本当の工藤Aではないんだからな。
抑圧された本来の人格は、ことあるごとにお前の中から姿を現し、解放されようとする。複雑な二重人格が始まり、偽りの人格を破滅へ導こうとする。
日記の中の少年は自らのヒカル、と名乗っていた。
日記の中で、彼はその理由を、「その名前しか思いつかなかったから」と説明している。それはそうだろう。だって生まれてすぐに君に人格を乗っ取られたAは、ほとんど赤ん坊と何も変わらない知識量しかない……自分の名前さえ分からないなかで、必死に探り当てたのは、皮肉にも自分の人格を抑圧している、お前の前世の名前だったというわけだ。
ヒカル、お前は怯えているんだろう。
本当の自分がやっと手に入れたと思った幸せを奪ってしまうのを。
本当は自分のものになるはずのなかった幸せを、横取りして享受しているんだからな。
最近の君の様子を見ていても、失神する回数が明らかに増えている……。
このままいけば、工藤Aは本当の人格を取り戻すだろう。そのとき、君の人格は消し去られ、君は消えてなくなる。それが怖いんだろう？」
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やっち(プロフ) - 凄くいいお話でした。ありがとうございます (2022年9月11日 12時) (
レス) @page50 id: aabe067d77 (このIDを非表示/違反報告)
アラバ - もう……なんかもう…………………やばかったですほんとに…………このお話思いついて、それを文章に現せるのが尊敬です………………もうなんか、やりきれない思いとか、最後までぐっっと涙をこらえていないと見れない作品でした……………小説、お疲れ様でした(泣)！！ (2021年5月16日 1時) (レス) id: bed3b6d329 (このIDを非表示/違反報告)
紅葉(プロフ) - 凄く泣けました!赤井さんや降谷さんとの絡みもとても素晴らしく主人公の設定もちゃんとしていて、なんかこう!言葉に表せないぐらい感動しました！！！！！！ (2021年5月6日 12時) (レス) id: 8b38c910a7 (このIDを非表示/違反報告)
寝子(プロフ) - やはり神作品…何度読んでも泣いてしまうんです。責任とってください…！（謎） (2020年10月10日 7時) (レス) id: 7be43a5c44 (このIDを非表示/違反報告)
ぽんでライム(プロフ) - めちゃくちゃに泣きました。二次創作ものでここまで感動したのは久しぶりです。一つの作品としてめちゃくちゃ楽しめました。作者様、ありがとうございました。 (2020年7月7日 23時) (レス) id: 01f6b2b9ab (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：海星
| 作成日時：2019年11月4日 14時
