ある青年の手記＿＿＿＿２ ページ46
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そう、これはどこにでもある、ごくありふれた物語。
お伽話のような、そんな話。
ただ一つ違っていたのは、俺が男で、美しくもなくて、だから俺を意地悪な養父から救い出してくれるような王子様なんて、どこにもいなかったというだけだ。
俺にガラスの靴の魔法をかけてくれる、魔法使いも。
一晩の夢のような、舞踏会も。
解けなかったガラスの靴の魔法も。
だけど、それは俺が悪かったのかもしれない。
だって俺は、ひたすら、誰かが助け出してくれるのを待っていたのだから。
いつも他人のせいにして、世界を恨んで、だから神様は魔法のかわりに、俺にもっと残酷な代償を与えたのだ。
養父は優しい人だった。
小柄で細い俺から見ると、巨人みたいに大きくて。整った顔や、人当たりのいい性格で、すぐに近所の人とも打ち解けた。
最初は俺にも親切だった。
君が生まれてすぐに離婚して、たった一人で子育てしてきた君のお母さんを、助けたい。君はもう、十八歳で、大人で、だから俺のことを受け入れがたいと思うかもしれないけれど、それならそれで構わない。
少し年の離れた兄貴とでも思ってくれ。
一緒にお母さんを支えていこう。
うれしかった。
憎む気持ちなど、みじんもなかった。
ずっと孤独に生きてきた母を、頼る人のいなかった母を、愛し支えてくれる彼に、なんの憎しみがあるというのだろう？
俺は素直に感謝した。
「どうか、母さんをよろしく」
今度こそ、俺のお母さんを幸せにしてあげてください。
そういって、深く頭をさげた俺を、涙を流して見つめる母と優しい目をした新しい父の姿があった。
そう、いつでもそうだ。
最初はなんだってうまくいくのだ。
歯車が狂いだしたのは、いつ頃だったか。
仕事から帰ってきた父が、ひどく暴言を吐くようになった。最初は上司や部下の悪口程度で、それほど気にならなかったが、それはじょじょにエスカレートしていった。
飯がまずい、部屋が汚い、といって母や俺に攻撃するようになった。
しかし父が殴るのは、きまって母ではなく、俺だった。
「おまえが不出来な息子だからだ。だからお母さんはお前ばかり構って、家の用事ができないんだ」
そう言って、日に日に殴られる回数は増えていく。
最初は父をとめていた母も、目を血走らせて俺を狂ったように殴る父に、怯えて抵抗しなくなった。
俺は完全に孤独だった。
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海星(プロフ) - カラ松ガールさん» ありがとうございますっ…！ めちゃくちゃ嬉しいです！！ 頑張ります！ (2019年10月31日 7時) (
レス) id: 9bd37337b9 (このIDを非表示/違反報告)
カラ松ガール(プロフ) - 前回からここまで一気読みしました！神ってました！大好きです！ (2019年10月30日 23時) (レス) id: addc97a0c8 (このIDを非表示/違反報告)
明里香(プロフ) - 74話に誤字がありました。「有紀子」ではなく、「有希子」です。 (2019年10月28日 23時) (携帯から) (レス) id: 85d4df75a2 (このIDを非表示/違反報告)
海星(プロフ) - 架印�靴気�» わわわ！ ほんとですね！ お恥ずかしい…ご指摘ありがとうございますっ！ (2019年10月26日 10時) (レス) id: 9bd37337b9 (このIDを非表示/違反報告)
架印��(プロフ) - 66話：「このタケシード姿、なかなかいいな」の所…。“タキシード”が“タケシード”になってますよ。 (2019年10月26日 0時) (レス) id: cb6e7377c2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：海星
| 作成日時：2019年10月18日 9時
