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「クリス…ヴィンヤード？」
それは俺でも聞いたことのある、世界的な大女優の名前だった。もっとも彼女は役柄に合わせて、自分の顔を変幻自在に変えることができるという特異性を活かして、メディアでは謎多き女優として知られている。
出演料もべらぼうに高いので、彼女が登場する映画やドラマは限られていた。
母の有希子がよく洋画を好んで見ていたので、その中には彼女が出演している作品もいくつかあった。
「へええ……あなたがね。すごいな」
俺は素直に感心した。
俺の前世の母親とは、似ても似つかぬ成功者だ。安いタバコと酒を毒のように煽り、堕落していくだけだった前世の母は、最後にはその美しさも衰えていた。
「近くのホテルに泊まってるのよ。二人で夜景を見ながらディナーなんてどう？」
「まだ夜景を見るには、時間が早いと思いますが」
「そうね。じゃあ、それまで聞かせて………あなたの話」
俺は返事をせずに、手渡されたヘルメットをかぶった。
黒いハーレーのバイクの後ろに跨ると、「しっかり捕まっていなくちゃダメよ」と囁かれる。
俺はその細い腰にそっと手をまわした。
ライダースーツのかたい革ごしに、かすかに波打つ血液の熱さを感じるようだ。
「離さないで」
彼女が俺に告げたその瞬間、魔法の呪文にでもかけられたかのように、俺の頭の奥が痺れて、こくんとうなずいていた。
クリスは、バイクのエンジンをうならせて走り出した。
● ● ●
都内の高級ホテルのスイートルーム。
クリスは昼間だというのにワインをあけ、俺にグラスを渡してそこに真っ赤な液体を注いでいく。
「イタリア産なの……知り合いにもらったんだけど。ワインは好き？」
「………酒は苦手です」
「あら、子供ね」
くすくす笑って、妖艶に足を組む。
きっとこの人が、俺の母さんとそっくりじゃなかったら、俺はこの色気にどうにかなってるだろうな、と思う。
目の前の女の美貌に、耐えられる男などそういるとは思えない。
「わたしと初めて会ったときのこと、覚えてる？ 随分前に、わたしを見ていきなり失神したときのことよ」
「………ええ」
俺はワインを一口飲む。
すぐに痺れた苦味が、舌を焼くように溶かして広がった。
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海星(プロフ) - カラ松ガールさん» ありがとうございますっ…！ めちゃくちゃ嬉しいです！！ 頑張ります！ (2019年10月31日 7時) (
レス) id: 9bd37337b9 (このIDを非表示/違反報告)
カラ松ガール(プロフ) - 前回からここまで一気読みしました！神ってました！大好きです！ (2019年10月30日 23時) (レス) id: addc97a0c8 (このIDを非表示/違反報告)
明里香(プロフ) - 74話に誤字がありました。「有紀子」ではなく、「有希子」です。 (2019年10月28日 23時) (携帯から) (レス) id: 85d4df75a2 (このIDを非表示/違反報告)
海星(プロフ) - 架印�靴気�» わわわ！ ほんとですね！ お恥ずかしい…ご指摘ありがとうございますっ！ (2019年10月26日 10時) (レス) id: 9bd37337b9 (このIDを非表示/違反報告)
架印��(プロフ) - 66話：「このタケシード姿、なかなかいいな」の所…。“タキシード”が“タケシード”になってますよ。 (2019年10月26日 0時) (レス) id: cb6e7377c2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：海星
| 作成日時：2019年10月18日 9時
