episode110 ページ20
パーティ当日の朝。
赤井さんがモーニングコールに来る前に、わたしはすでに起きていた。
髪の毛を乱してしまわないよう、先にドレスに着替えてしまう。快斗の選んだ黒のタイトドレスは、胸元もざっくり空いているので、下着をつけることができない。アンダーだけはぎりぎり見えなくて、ほっと安心した。
快斗に言われた通り、慎重にメイクしていく。
髪はトップからがっつりカーラーで巻いて、手櫛で柔らかくとかして整える。
最後に前髪を横にかきあげれば、快斗直伝の「セクシーA」の完成だ。
鏡にうつる自分を見て、首をかしげる。
どうなんだろ、これ。ホントに似合ってんのかな……いくらメイクしているとはいえ、普段からさんざん見慣れた自分の顔なので、あまり違いが分からない。
太ももまで入ったスリットが落ち着かず、試しにはいたハイヒールも全然慣れなかった。
やっぱ赤井さんが買ってくれたワンピースから、適当に選んで来た方がいいかな……?
そんなことを考えていると、部屋のドアがノックされた。
「入っていいよ〜」
答えると、「なんだ、もう起きてたのか」と朝早いせいで、まだ少しかすれ気味の赤井さんの声がする。
「今日はずいぶん早起きだな」
入ってきた赤井さんは、彼もまだ寝起きなのか、ミネラルウォーターを片手にあくびを噛み殺していた。
「まあね。だってパーティだもん! どう、赤井さん!?」
ひょこっと首をかしげて、赤井さんを見る。
赤井さんがドアを閉め、わたしを見る。
そして、ミネラルウォーターを思いっきり床に落とした。
ぼとん、という鈍い音が響く。あ、と私が声を上げるが、赤井さんは以前硬直して私を見つめ続けている。
「ど、どうしたの、赤井さん……」
赤井さんは答えない。
ただ、目を見張っている。
私はそろそろと自分の体に視線を落とす。
「あー、えっと……やっぱおかしい……?」
そこでようやく、赤井さんは現実に引き戻されたらしい。
ミネラルウォーターを拾ってわきによけ、つかつかと歩み寄ってくる。そしていきなりガシッとわたしの肩を掴んだ。
「………おい、どこで買ったんだそのドレス」
「え、えっと……ぷ、ぷれぜん、と?」
「present!?」
赤井さんが大声を上げたので、私は飛び上がった。
「誰だ? 男か?」
「え、あ、うん……前の学校の、同級生…だけど」
快斗の顔を思い出しながら、私はモゴモゴと返答した。
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やっち(プロフ) - 更新お待ちしてます (2022年4月22日 11時) (レス) @page23 id: aabe067d77 (このIDを非表示/違反報告)
みー - 主人公ちゃんも赤井さんも魅力的で何度も読み返しちゃいます、、いつかまた戻って更新されてるの楽しみにしてますね! (2021年8月31日 20時) (レス) id: fa7939d4a9 (このIDを非表示/違反報告)
S(プロフ) - 面白かったです。更新楽しみにしています!!! (2021年6月2日 2時) (レス) id: 3c947ce476 (このIDを非表示/違反報告)
ふわ - めっちゃくちゃおもしろかったです! (2021年4月23日 17時) (レス) id: 1d6a9bd8f3 (このIDを非表示/違反報告)
キサキ(プロフ) - 面白くて何度も戻ってきて読んじゃいます、更新お待ちしております頑張ってください!!! (2020年10月20日 10時) (レス) id: a8bb3b0a09 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:海星 | 作成日時:2019年9月30日 12時