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「あなたは……」
そこには次郎吉さんがすでに待機していて、厳しい視線をおっちゃんに投げかけた。
次郎吉さんだけではなく、パーティの主席に顔を並べていた、鈴木財閥の重鎮たちが勢ぞろいしており、一様に重苦しい表情を浮かべていた。
どうしたんだ、いったい……?
「……毛利探偵。少々、困った事態になりましてな」
「いったいどうしたんです、次郎吉さん」
おっちゃんの問いかけに、次郎吉さんは眉をひそめ、両手で顔を覆った。その横顔は数時間前とは打って変わり、げっそりとやつれている。
「実は__________」
次の瞬間、彼の口から放たれた言葉に、俺たちは息を飲んだ。
「園子が__________、我が鈴木財閥の令嬢が、何者かに誘拐された」
ゆ、ゆうかい?
園子が?
「ま、まさかそんな……彼女は蘭とAさんとケーキを食べていましたよ。いつ誘拐されたというんですか」
「分からない……とにかく、先程私の携帯に電話があって、『鈴木家のご令嬢は預かった、警察に報せれば即刻殺す』、と」
「犯人の要求は」
安室さんが素早く聞いた。
「わからない。今のところは何の要求もない。また、連絡するということだった」
「でもおかしくない?」
俺が始めて声を出すと、部屋の中にいた全員が俺の方を向く。
おっちゃんが「オメーは黙ってろ」と一喝してきたが、無視して話し出す。
「園子姉ちゃんがいなくなって、どれくらいになるのかは分からないけど、もしそうなら、蘭姉ちゃんが心配して僕たちに知らせると思うんだけど」
「確かにそれもそうだ。蘭かAさんのどちらかが、異変に気がつきそうなもんだな」
おっちゃんが納得して頷く。
「それに疑問はまだある」
俺はチラリと安室さんを見た。安室はんは俺と目を合わせようとしない。じっと床を睨みつけている。その瞳が、彼には珍しいことに動揺して揺れていた。
やっぱり。
安室さんも同じことを心配している。
「実はね、Aお姉さんが行方不明なんだ」
「はぁ!!? Aさんが!!? どういうことだ?」
おっちゃんが眉を釣り上げる。
「30分以上前から、連絡がつかなくなってる。携帯の電源が切られていて、どこにいるか分からない。もしかしたら__________」
さすがのおっちゃんにも、俺の言いたいことが分かったようだ。すっと顔色が青ざめた。
「園子姉ちゃんだけじゃない。蘭姉ちゃんも、Aさんも、誘拐されたのかも」
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mei(プロフ) - 素敵すぎる…!!!胸キュンしすぎて苦しい状況に陥っています。どうしましょう。 (2022年5月5日 3時) (レス) @page46 id: b5f626851a (このIDを非表示/違反報告)
やっち(プロフ) - 甘々零さん、ごちそうさまです。私もそんなふうに思われたい! (2022年4月21日 17時) (レス) @page46 id: aabe067d77 (このIDを非表示/違反報告)
belle(プロフ) - この作品を何度読み返したことか…海星さんの書く零さん好きすぎます。また書いていただけませんか?是非読みたいです (2022年4月21日 0時) (レス) @page46 id: a2ba23688b (このIDを非表示/違反報告)
推しが尊いマン(プロフ) - はあああああ番外編最高かよおおおおおおお甘々じゃねえかよおおお最高ありがとうございます (2021年1月11日 15時) (レス) id: ae253cfa81 (このIDを非表示/違反報告)
柘榴(プロフ) - めちゃくちゃキュンキュンして一気に読んでしまいました!景光と零と夢主が夢の中で3人で会話してるの見たいです!更新待ってます! (2020年3月19日 19時) (レス) id: 2a4d2a700d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:海星 | 作成日時:2018年6月15日 16時