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迷子のことよりも、もっと深刻な事態が彼を追い立てているとでもいうかのように。
「レイくん、どうしたの? 大丈夫?」
レイくんは何も答えなくなった。
痛いくらいに、私の手だけを握り締め、懸命に離すまいと廊下の奥へ引っ張って行く。
ホール内の煌びやかな装飾とはうってかわって、無機質なコンクリートが剥き出した廊下は、バックヤードそのものといった感じだ。
白い蛍光灯が薄暗い廊下を照らしている。
「レイくん、どこに行くの?」
まるで、レイくんは__________
そう、レイくんはまるで、これからどこに行くのか分かっているみたいに。
迷子、なのに………?
どういうこと?
どくどく、と体を流れる血流が早くなって行く。
妙に冷たい汗が、背中を流れた。
おかしい。
おかしい。
おかしい。
謎のアラームが私の脳内で鳴り響き、一刻も早くここから立ち去れと告げていた。
もうすぐ廊下の奥へとたどり着く。
ボイラー室か何かだろうか? 緑色の鉄のドアが、禍々しい色で私を見つめていた。「立ち入り禁止」の文字が、薄暗い中に浮かびあってくる。
逃げろ。
「レイくん、わたし__________」
もう、帰りたい。
そう言いかけた時、背後からいきなり鋭い電気が身体中に流れて、私は意識を失った。
●
遅いな………。
Aと別れてから、もう30分以上、たっている。
だがいっこうに迷子の館内放送が流れる気配も、Aが戻ってくる気配もない。
大丈夫なのか、あいつ。
チラチラ時計を見ている俺に、コナンくんが「どうしたの?」と尋ねてきた。
「いや、実はね……」
さっきの出来事を話すと、ふうんとうなずくコナン君。
その横で沖矢昴が聞き耳をたてていることは、織り込み済みだ。仕方がない。
「会場で迷ってるんじゃないの? お姉さんのことだから」
「まあ、それはあるかもしれませんね」
案の定、沖矢が相槌をうつ。
「盗み聞きはやめていただきたいですね」
俺の皮肉を完全に黙殺し、沖矢は「しかしそれにしても30分以上たっている。妙ですね」と首を傾げた。
「まあ確かに……それこそ道に迷ったなら、安室さんあたりに電話してきそうだし」
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mei(プロフ) - 素敵すぎる…!!!胸キュンしすぎて苦しい状況に陥っています。どうしましょう。 (2022年5月5日 3時) (レス) @page46 id: b5f626851a (このIDを非表示/違反報告)
やっち(プロフ) - 甘々零さん、ごちそうさまです。私もそんなふうに思われたい! (2022年4月21日 17時) (レス) @page46 id: aabe067d77 (このIDを非表示/違反報告)
belle(プロフ) - この作品を何度読み返したことか…海星さんの書く零さん好きすぎます。また書いていただけませんか?是非読みたいです (2022年4月21日 0時) (レス) @page46 id: a2ba23688b (このIDを非表示/違反報告)
推しが尊いマン(プロフ) - はあああああ番外編最高かよおおおおおおお甘々じゃねえかよおおお最高ありがとうございます (2021年1月11日 15時) (レス) id: ae253cfa81 (このIDを非表示/違反報告)
柘榴(プロフ) - めちゃくちゃキュンキュンして一気に読んでしまいました!景光と零と夢主が夢の中で3人で会話してるの見たいです!更新待ってます! (2020年3月19日 19時) (レス) id: 2a4d2a700d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:海星 | 作成日時:2018年6月15日 16時