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「口にキスするとは言ってない」
意地悪な顔で私を見つめてる零さん。
かああ、と顔が熱くなっていくのを感じる。
いやだって、キスするって言ったら唇だと思うじゃん……。
「も、もう、そんな意地悪なこと言うなら、キスしてあげないもん」
「それは困ったなあ」
全然困ってなさそうな声でそう言うと、零さんはくすりと笑って私の顎をくいっとあげた。
「まあ、口にしないとも言ってないけどね」
悪戯に耳元で囁かれ、息をつく間も無く、零さんの唇が重なった。
◇
スコッチさんの本名を聞いたのは、つい先日だった。
唯川景光っていうんだ。
零さんの声で聞くスコッチさんの名前は、なんだか新鮮で、暖かかった。
私はその暖かさを思い出し、ふっと微笑む。
「零さん、私ね__________ずっと黙ってたことがあるんだけど」
「うん」
車を運転したまま、零さんが頷いた。
知っている、とも、知らなかった、とも言わない。ただ、頷いてくれた。
「私、ここじゃない世界からやって来たんだよ。
零さんを助けるために__________」
◇
話はとても長くなった。
どうしてスコッチさんが、私をこの世界に連れてきたのか。
そもそもどうやって、私はスコッチさんと知り合ったのか。
幽体離脱した時に、零さんの本当の仕事を知ったことも、スコッチさんから零さんの本名を聞いたことも。
あなたの親友が見えていながら、あなたにはずっと黙っていたことも。
何度も言葉が喉につっかえて、その度に言い直さなければならなかった。
本当は零さんを捨てて、元の世界に帰ろうかと思っていたことも、話した。
本当に、全て、吐き出した。
全部話し終わった後、私は一番大事なこと、最後に付け足した。
「景光さんがね。私のこと、親友だって言ってくれたんだよ。
もう、お嬢ちゃんも俺の親友だって______」
スコッチさんのことを思い出し、私は鼻の奥がつんとするのを感じた。
あれれおかしいぞ。
泣くつもりなんてなかったのに。
零さんがくすりと笑った。
「いかにもアイツが言いそうなことだな。ハードボイルドな顔面の割に、クサい台詞が好きだからさ」
「それ零さんが言う?」
「え? どういうこと?」
「零さんもスーパーキザな割に、ベビーフェイスなゴリラでしょ?」
「………車の中で襲われたいのか?」
零さんがハンドルを握ったまま、和かな微笑みを私に向けたので、慌てて首をぶるぶるとふった。
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mei(プロフ) - 素敵すぎる…!!!胸キュンしすぎて苦しい状況に陥っています。どうしましょう。 (2022年5月5日 3時) (レス) @page46 id: b5f626851a (このIDを非表示/違反報告)
やっち(プロフ) - 甘々零さん、ごちそうさまです。私もそんなふうに思われたい! (2022年4月21日 17時) (レス) @page46 id: aabe067d77 (このIDを非表示/違反報告)
belle(プロフ) - この作品を何度読み返したことか…海星さんの書く零さん好きすぎます。また書いていただけませんか?是非読みたいです (2022年4月21日 0時) (レス) @page46 id: a2ba23688b (このIDを非表示/違反報告)
推しが尊いマン(プロフ) - はあああああ番外編最高かよおおおおおおお甘々じゃねえかよおおお最高ありがとうございます (2021年1月11日 15時) (レス) id: ae253cfa81 (このIDを非表示/違反報告)
柘榴(プロフ) - めちゃくちゃキュンキュンして一気に読んでしまいました!景光と零と夢主が夢の中で3人で会話してるの見たいです!更新待ってます! (2020年3月19日 19時) (レス) id: 2a4d2a700d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:海星 | 作成日時:2018年6月15日 16時