零と霊編22 ページ48
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え?
今、なんて言った?
体の中心から、疼くような熱の塊が込み上げてくる。
思わず飛びのこうとした私を、安室さんは目ざとく察知してさらに抱きしめた。
「す、好きって……ど、どういう…」
「ん」
答えるかわりに、今度は顎をくいっと持ち上げられる。そのまま安室さんの唇が重なった。
だけど夢の中だからか、なんの温もりも感じない。その柔らかな感触だけしか分からない。
安室さんはそれに苛立ったのか、いきなり私をソファに押し倒した。
「あ、安室さん……!!!??」
「……安室じゃない」
「え?」
じゃあ本当は、降谷れいさんですか__________
そう問いかける前に、二度目のキスが降り注いだ。
何とか温もりを探し出そうとでもいうように、角度を変えて何度も啄むように。
安室さんの舌が私の口の中に入り込んできた。甘さも何も感じないそれに、ただ生理的な涙がこぼれ落ちる。
安室さんにとっては夢かもしれないけど……私にとっては夢じゃないんだよ。
どうせなら、温もりの感じる現実でキスしてほしかった。
悲しいとか、
辛いとか、
そういうんじゃなくて。
ただただ、切ない。
こんなに近くにいるのに、あなたの温もりを感じられないことが。
安室さんが諦めたようにそうっと唇を離す。
透明な糸が唇からつたって消えた。
「……ごめん、泣かないで」
「別に泣いてません。びっくりしただけです」
安室さんはちょっと困ったらように笑うと、だまって私を抱きしめる。
「夢の中なら、Aのこと、好きにできるのに……抱きしめるのも、キスをするのも」
……いや、病室でキスしてたやないかい。
悲観的に呟く安室さんに、激しく突っ込みたい衝動に駆られたが、何も言わないでおく。
私が黙っていると、安室さんはぐりぐりと私の肩に額を擦り付けた。
「なんか言え、ばか」
え。なにこの生き物。可愛い。
それでも黙っていたら、安室さんが私の背中をポカポカ叩き始めた。
地味に痛いからやめてほしいし、シャワー上がりに犯罪級の雄フェロモンを振り撒いていたと思ったら、今度は子供みたいに甘えてくるとか、ヤバくない?
凄まじいギャップに、鼻血がでそう。無理しんどい。
「……好きにしてもいいですよ」
「え?」
安室さんが軽く眼を見張る。
「私が目覚めたら、好きにしてもいいですよ。
キスしてもいいし、抱きしめてもいいです。
本当ですよ」
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ん - え、え、、突き落とされて刺されそうになったのに許す意味が分からない…周りのみんな甘ちゃん過ぎる… (2022年6月11日 4時) (レス) id: b95582035d (このIDを非表示/違反報告)
さち - すごくおもしろいです。続きが気になって読んじゃいました。よろしくお願いします。 (2019年2月7日 9時) (レス) id: 16ee8f1076 (このIDを非表示/違反報告)
海星(プロフ) - salomeさん» ハマっていただけて、本当に嬉しいです……! 更新頑張れます! ありがとうございます! (2018年5月17日 17時) (レス) id: 5a53eb76ac (このIDを非表示/違反報告)
salome - いつも見ていますこの小説かなりハマりました更新されるたびに面白く感じたりハラハラドキドキしたり今回夢主がストーカーに刺されて重症になって安室さんも夢主に対して自覚からマジ恋に目覚めて夢主早く意識覚まして安室さんを安心させて欲しい (2018年5月17日 14時) (レス) id: 31aa9c013b (このIDを非表示/違反報告)
海星(プロフ) - 秋都さん» 朝から嬉しくて号泣です……ありがとうございます……! (2018年5月17日 7時) (レス) id: 5a53eb76ac (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:海星 | 作成日時:2018年5月2日 21時