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零と霊編18 ページ44

「Aさん……!!!!??」


『えっ……!』


安室さんの視線が、空中を彷徨う。
見えない何かを必死で探すみたいに。


『あ、安室さん、見えるんですか!?』


「Aさん、そこにいるんですか!?」


『こ、ここにいますよ! ずっとここにいます! 見えないんですか! ねえ、安室さん!』


安室さんはキョロキョロと辺りを見回している。
一瞬だけ、私と目があった。


「A、さん?」


安室さんの声は、今まで聞いたことがないほど切なげで、思わず胸がしめつけられた。
そうっと手が伸びてきて、私の頰を撫でるようにした。だがそれは、虚しく宙を掻くだけだ。


『安室さん! ここにいます!』


私は必死で手を振ったり、宙返りしたりして、安室さんにアピールしたが、安室さんはそれ以降、目を合わせてくれることはなかった。

だめだ。見えていない。
そりゃそうだ。安室さんには、私と違って霊感なんてないわけだし。


「いるわけないよな……」


ため息をつき、再びどすん、と席に腰を下ろす安室さん。


『ここにいますよ、安室さん』


私は思わずそう言って、安室さんの手にそうっと自分の手を重ねた。けれど、その手は透けてしまう。

それが堪らなく悲しくて。
切なくて。





『ずっとここにいますからね』


ずっとずっといるから。

安室さんが、いてくれたように。
私も。


安室さんの仕事が終わる朝方まで、私はずっと彼のそばを離れなかった。

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- え、え、、突き落とされて刺されそうになったのに許す意味が分からない…周りのみんな甘ちゃん過ぎる… (2022年6月11日 4時) (レス) id: b95582035d (このIDを非表示/違反報告)
さち - すごくおもしろいです。続きが気になって読んじゃいました。よろしくお願いします。 (2019年2月7日 9時) (レス) id: 16ee8f1076 (このIDを非表示/違反報告)
海星(プロフ) - salomeさん» ハマっていただけて、本当に嬉しいです……! 更新頑張れます! ありがとうございます! (2018年5月17日 17時) (レス) id: 5a53eb76ac (このIDを非表示/違反報告)
salome - いつも見ていますこの小説かなりハマりました更新されるたびに面白く感じたりハラハラドキドキしたり今回夢主がストーカーに刺されて重症になって安室さんも夢主に対して自覚からマジ恋に目覚めて夢主早く意識覚まして安室さんを安心させて欲しい (2018年5月17日 14時) (レス) id: 31aa9c013b (このIDを非表示/違反報告)
海星(プロフ) - 秋都さん» 朝から嬉しくて号泣です……ありがとうございます……! (2018年5月17日 7時) (レス) id: 5a53eb76ac (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:海星 | 作成日時:2018年5月2日 21時

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