零と霊編14 ページ40
安室さんはビルのドアをそうっと開ける。
ギギギ、と錆びれた音とともに、ドアが開いた。埃が舞う。
安室さんは躊躇うことなく、奥へと突き進む。
建物の中央には踊り場があって、その奥に上へと続く階段がある。
その階段を上りきると、誰かがぬっと暗闇から現れた。
思わず、ひゃ、と声をあげる。
「遅いじゃない、バーボン。何やってたのよ」
暗闇から現れたのは、金髪の外国人の女の人だ。口元に真っ赤なルージュをひいて、グラマラスな体型をしている。
え？ だれ？
「すみません、ちょっと急用が入ったものですから」
安室さんは素っ気なく言うと、女の人の脇を通り過ぎて、その横の部屋へと入っていく。
「ソフトはもう、回収したんですか？」
安室さんが女の人に問いかける。
「まだよ」
「はい？」
「そのソフト、ロックがかかってるから解除してくれる？ 私、パソコン苦手なの」
「もっとマシな言い訳はなかったんですかね」
面倒くさい事はすぐ僕に回すんですから、とブツブツ言いながら、部屋の中央に置かれたパソコンのキーボードを叩く安室さん。
なんていうか、いつもの安室さんとは全然違う雰囲気というか__________
まるで、別人だよ。
誰なの、この人は。
安室さん、だよね？
いつもの紳士的で優しそうな雰囲気はカケラもなかった。
目は冷たく光って、にこりともしない。
これが本当の安室さんなの……？
確か、バーボンって呼ばれてたけど……この外国人の女の人は？
どういう関係？
彼女って風ではなさそうだし。
仕事仲間？
なんの仕事なの、これ。
そもそも、このビルはどう見ても廃屋だった。勝手に入っていいのだろうか。まして、中に置いてあるパソコンをいじったり。ロックを解除したり。
何かおかしい。
そう思っていた時、ドタドタと誰かが暴れる音がして、部屋の奥の物置のドアが開いた。
「あら、お目覚め？ 太腿に一発じゃ足りなかったかしら」
物置から出てきたのは、中年くらいの男の人だ。顔は苦痛に歪み、太腿からは__________
うそ、血？
「ベルモット……会社の人間がいるなんて聞いてませんが」
「私だって知らなかったのよ。ここに来たら、もうすでにあの男がいて、ソフトを持ち去ろうとしてたから、とりあえず太腿を撃って、納屋に放り込んでおいたんだけど」
太腿を撃って？
納屋に放り込んだ？
え？
その時、はっとした。
安室さんの頭上。
黒い靄が、湧き出てきていた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 2451人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ん - え、え、、突き落とされて刺されそうになったのに許す意味が分からない…周りのみんな甘ちゃん過ぎる… (2022年6月11日 4時) (
レス) id: b95582035d (このIDを非表示/違反報告)
さち - すごくおもしろいです。続きが気になって読んじゃいました。よろしくお願いします。 (2019年2月7日 9時) (レス) id: 16ee8f1076 (このIDを非表示/違反報告)
海星(プロフ) - salomeさん» ハマっていただけて、本当に嬉しいです……！ 更新頑張れます！ ありがとうございます！ (2018年5月17日 17時) (レス) id: 5a53eb76ac (このIDを非表示/違反報告)
salome - いつも見ていますこの小説かなりハマりました更新されるたびに面白く感じたりハラハラドキドキしたり今回夢主がストーカーに刺されて重症になって安室さんも夢主に対して自覚からマジ恋に目覚めて夢主早く意識覚まして安室さんを安心させて欲しい (2018年5月17日 14時) (レス) id: 31aa9c013b (このIDを非表示/違反報告)
海星(プロフ) - 秋都さん» 朝から嬉しくて号泣です……ありがとうございます……！ (2018年5月17日 7時) (レス) id: 5a53eb76ac (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：海星
| 作成日時：2018年5月2日 21時
