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零と霊編12 ページ38

♡ ♡ ♡


病室まで帰ってきた。そこまでは問題なかった。

私のベッドの隣に置かれたパイプ椅子に腰掛けた安室さんは、ホテルから持ってきたノートを開いて、それを読み始めた。

ゆっくりと丁寧に、ページの文字を追って行く安室さん。

そんな大したこと書いてないんだけどな……熟読するようなものじゃないと思う。

そして再び全部読み終わった後、安室さんがいきなり私のベッドに手をついて、私の顔を覗き込む。


『えっ? えっ? ちょ、何やってんの? ねえ、何やってんの?』

『この体勢といえば、やることは一つだろ』

にやにや笑ってるスコッチさん。

安室さんがどんどん私の顔に、自分の顔を近づけていく。何いきなり血迷ってんのこの人。

『え、待って待って待って。キスしちゃう、キスしちゃうよ安室さん!!!』

『キスしようとしてるんだよ』

『ぎゃああああああ、ダメダメダメ。何考えてんの。どういうつもりなの』

『だからキスするつもりなんだよ』

『むりむりむり。やめてええええええ、安室さんんんんん』

私の悲鳴も虚しく、病室にちゅ、という甘い音が響き渡る。


ぎゃああああああああああああ


キスされたああああああああ


安室さんにキスされたあああああ


『性犯罪だよ!!! 紛うことなきセクハラだよ!!!』

『キスくらいで大袈裟なんだよ』

『私、キスなんてしたことないもん!!!』

『マジかよ。ファーストキスおめでとう』

『もう無理いいぃ。安室さん絶対呪ってやる』

『ホントか。一生呪ってやってくれよ』

はははは、と可笑しそうに一人笑っているスコッチさんを睨んでいたら、安室さんが寂しげにポツリと呟いた。


「俺はまだ、君の王子にはなれないらしいな」


ん?


聞き間違い? なに?
なんか、鳥肌もののキザ台詞が……

えっとー……

なんて言った?

透くーん、今、なんて言った?


君の王子にはなれないらしいな………!!!??


『まさかキスで目覚めるとでも思ってたの!!? 血迷ってるどころか頭明後日の方向にいってるじゃん!!! しっかりしろよ安室透!!!』

『ひー……お腹いてえ。お前ら面白すぎだろ。もう漫才組めよ』

『何も面白くないっつーの!! どんだけキザなのこの人!!』

『文句言ってる割に顔は赤いな』

『早く成仏しろ髭面ゴースト』

『勘弁してやってくれよ。お嬢ちゃんのことが好きなんだ』


安室さんを見るスコッチさんの目は、いつもと変わらず優しかった。

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- え、え、、突き落とされて刺されそうになったのに許す意味が分からない…周りのみんな甘ちゃん過ぎる… (2022年6月11日 4時) (レス) id: b95582035d (このIDを非表示/違反報告)
さち - すごくおもしろいです。続きが気になって読んじゃいました。よろしくお願いします。 (2019年2月7日 9時) (レス) id: 16ee8f1076 (このIDを非表示/違反報告)
海星(プロフ) - salomeさん» ハマっていただけて、本当に嬉しいです……! 更新頑張れます! ありがとうございます! (2018年5月17日 17時) (レス) id: 5a53eb76ac (このIDを非表示/違反報告)
salome - いつも見ていますこの小説かなりハマりました更新されるたびに面白く感じたりハラハラドキドキしたり今回夢主がストーカーに刺されて重症になって安室さんも夢主に対して自覚からマジ恋に目覚めて夢主早く意識覚まして安室さんを安心させて欲しい (2018年5月17日 14時) (レス) id: 31aa9c013b (このIDを非表示/違反報告)
海星(プロフ) - 秋都さん» 朝から嬉しくて号泣です……ありがとうございます……! (2018年5月17日 7時) (レス) id: 5a53eb76ac (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:海星 | 作成日時:2018年5月2日 21時

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