223.炎は口ほどに物を言う ページ32
ナワバリを出て皆んなが睡眠を取っている中、サンジ君は見張り台に立っていた。
隣に並ぶとチラと私を見る。
「まだ夜明け前だ。寝ないのか？」
「私代わるよ、さっき少し寝てたし」
「あれを寝るとは言わねーよ」
死にかけてた事を茶化すと私を目を覗き込んで、頬に触れた。
体から出る炎やら色っぽい微笑に顔が熱くなる。
「俺は、Aが好きだ」
まるで息をするように、それが当たり前の事だと言うくらい自然に、私への好意が口から出てくる。
私は魚みたいにパクパクと口を動かす事しか出来なくて、何も声にならない。
そんな私をサンジ君がやれやれと呆れた表情で見て、親指で頬を撫でる。
「『惚れた男の結婚式をぶっ壊したいのは正解かも』」
「！？」
そういえば、島に来たばっかのときサンジ君が寂しい事いうから、テンション上がってそんな事言ったかもしれない。
「『サンジという男の心の奥深くに死んだ後も、寄り添っていたい』って言ってたらしいな？」
「え、っと…」
あそこまで磯撫も言わなくてよかったのでは…。
まともに答えられない私の口を無視して、炎だけはサンジ君の手を包んでいる。
「キスしようとしたら『嫌じゃないんだよ！？』だしな」
「えっ…あ゛ー…」
あの時は、完全に勢いで言ったけど冷静になれば…つまりそういう事だ。
「普通なら確実に付き合ってる状況なのに、なんで付き合ってねぇんだろうな」
頬にあった指が唇を滑る。
たったそれだけなのに、心臓が爆発四散しそうなくらいドクンと大きく跳ね上がった。
「Aが俺の気持ちに応えなかった最大の理由は遠くなった。もう、俺を拒む理由なんてねぇよな」
喉がカラカラだ。
サンジ君の真剣な声と熱を孕んだ視線にシナプスが焼き切れそうだ。
「でも…私…翼が…人じゃ…ない」
「今度は人じゃねぇって理由か？」
「だって…！」
サンジ君は根元まで深く煙草を吸うと同じくらい深く煙を吐き出して、煙草を揉み消した。
「人間との交配で血が薄まったって言ってたな。つまり前例はあるって事だ。何も問題ねぇよな」
私が言った事や周りが言った事でどんどん論破されていく。
きっと何を言ったって論破されるだろうし、私の炎はサンジ君への気持ちを語るのだろう。
「YESしかもう言えないじゃん」
「早い段階からAはずっとYESって言ってたぜ？」
ふっと笑ったサンジ君と唇が重なる。
ぼやけた視界の端、触れたあたりから青い炎が柔らかく激しく吹き上がった。
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銀之助(プロフ) - 未だにお気に入り登録、お気に入り作者登録、ハートの通知などをたくさんいただき、ありがとうございます。この場を借りてお礼申し上げます。これからも長く楽しんで頂けたら、幸いです。 (2022年9月16日 22時) (
レス) id: 9c08df65af (このIDを非表示/違反報告)
銀之助(プロフ) - 香さん» コメントありがとうございます。かなりの長編だったのに全部読んでいただき、面白いと思っていただけて嬉しいです。キュンキュンをお届けできて一安心いたしました。 (2022年5月12日 21時) (レス) id: 9c08df65af (このIDを非表示/違反報告)
香 - 本当に好きすぎです…面白かったしキュンキュンしました！ (2022年5月9日 11時) (レス) @page48 id: 64178017ff (このIDを非表示/違反報告)
銀之助(プロフ) - たろ。さん» コメントありがとうございますー。一気読み嬉しいです！ありがとうございます。サンジくんの魅力を損なわず書けていたなら、本当に良かったです。 (2022年4月9日 22時) (レス) id: 9c08df65af (このIDを非表示/違反報告)
たろ。(プロフ) - やばいめっちゃ泣いたし一気読みした…サンジくんたまんねぇなおい。 (2022年4月5日 3時) (レス) @page48 id: ba071d904f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：銀之助
| 作成日時：2018年7月11日 21時
