195.ありがとう ページ4
サンジ君が出て行ってから、しばらく経った。
私は宣言通り部屋に突っ込まれている。でも、室内にいても伝わってくる振動と船の揺れ、そして攻撃されている音。
私だけ、何も出来ない。ベッドの上で膝を抱えているだけ。ダメでいいって…サンジ君は言ってくれたけど。
それでも、何かしたい。だって……
「……時間が無いよ、クロ様」
『……』
「だから、サンジ君の役に立ちたいよ。少しでも長く…サンジ君と一緒にいたいよ……」
ポロと涙が零れた。
死の運命は、変えられない。最終手段を使う前も後も…私は長くなかった。
母さんに死を願われて、そして病気になって……まるで、世界から死を願われているんじゃないかと思うくらいだ。
でも、そんな私の目の前に君が現れたんだ。
「 "どうせ死ぬなら君の元で" って…思ってたんだ」
『 "元で" ？』
ベッドからおりて、机や棚をあさる。
「うん… "元で" 」
サンジ君は怒るだろう。なんで来たんだって。
ここでじっとして、力を使わない方がサンジ君と少しは長く居られるかもしれない。でも、サンジ君に何かあったら絶対後悔する。
サンジ君と長く居られない後悔は、もうしてる。だったら、サンジ君に何かある後悔をしない為に私は動きたい。
「後戻りなんてしない。毒を食らわば皿までってね」
『行くのか』
「うん」
適当な紙にペンで文字を書き、その上に私の血を垂らしてベッドに置いた。
「私の代わりに返事しといて」
ベッドにあった紙が半分が持ち上がり、垂直にベッドの上に自立しすると頷くように紙の半分が曲がった。
私は、それを見届けてドアノブに手をかける。
『A』
「ん？」
声が後から聞こえて、振り返るといつの間にか私の中から出て姿を現していたクロ様がいて、ドアノブに手をかけたまま続きを待った。
『死なないでくれ』
「…それ、今言う？」
涙で濡れたその声にどういう表情をしたらいいのかわからなくて、苦笑いをするしかなかった。ドアノブから手を離し、俯いたクロ様に近づいてモフモフとした身体に抱きつくと、大きな翼が背中にまわる。
「本音を言わせてあげられなくて…ごめんね」
『……っ』
「ありがとう、クロ様」
私のワガママを許してくれて、私の思うようにさせてくれて、ありがとう。
体を離して、クロ様の顔に手を伸ばした。
「サンジ君を助ける為に来た。守られに来たんじゃない」
『……あァ』
頭首が一度した約束を破るわけにはいかない。
君を連れ戻すよ。
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銀之助(プロフ) - 未だにお気に入り登録、お気に入り作者登録、ハートの通知などをたくさんいただき、ありがとうございます。この場を借りてお礼申し上げます。これからも長く楽しんで頂けたら、幸いです。 (2022年9月16日 22時) (
レス) id: 9c08df65af (このIDを非表示/違反報告)
銀之助(プロフ) - 香さん» コメントありがとうございます。かなりの長編だったのに全部読んでいただき、面白いと思っていただけて嬉しいです。キュンキュンをお届けできて一安心いたしました。 (2022年5月12日 21時) (レス) id: 9c08df65af (このIDを非表示/違反報告)
香 - 本当に好きすぎです…面白かったしキュンキュンしました！ (2022年5月9日 11時) (レス) @page48 id: 64178017ff (このIDを非表示/違反報告)
銀之助(プロフ) - たろ。さん» コメントありがとうございますー。一気読み嬉しいです！ありがとうございます。サンジくんの魅力を損なわず書けていたなら、本当に良かったです。 (2022年4月9日 22時) (レス) id: 9c08df65af (このIDを非表示/違反報告)
たろ。(プロフ) - やばいめっちゃ泣いたし一気読みした…サンジくんたまんねぇなおい。 (2022年4月5日 3時) (レス) @page48 id: ba071d904f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：銀之助
| 作成日時：2018年7月11日 21時
