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「おはよー美優」
「おはよ〜、A。……ってどしたの、なんかあった?」
「え、なんで?なんもないけど。」
「……あっそ。今日一限佐藤だよ〜、遅刻したら終わる」
「マジか。早く行こー」
そんな風に何気ない会話を交わす。……Aのヤツ、本当に気付いていないのだろうか。美優は思う。
いつにも増して可愛らしい振る舞い。巫山戯たように話すけれど、どこか赤い顔。……何かあったのは、一目瞭然だろうに。
「……御影くん?」
「え、なに。玲王がなんかあった?」
「いやー、べつに?」
「なにそれ」
キーンコーン。チャイムが鳴りかける。
「やば、早く行くよA!」
「はいはーい」
Aの手を引いて駆け出す。幸いなことにさほど教室までもう距離もなく、滑り込みだったが教師が到着していなかったためセーフ判定だった。ギリギリ。
カツ、と革のバッグを下ろして、隣の席のAに目を向ける。
「あちー。この時期でも走るとちょっと暑いね」
そう言いながらAが脱いだブレザーの内側に、「MIKAGE」の刺繍。……へぇ。
「……あんた、自分の制服どうしたの」
「え?……なんでバレたの」
「ブレザー、襟元、刺繍」
ココ、と指差すと、ばっと後ろを振り向いて確認するA。刺繍を眺め少し呆然としてから、こちらを向き直る。
「……黙っててくんない?」
「いーよ。口止め料は今日の学食ね」
「ありがと、親友」
「にしてもあんた凄いね。学園一のイケメンくんのブレザー?……付き合ったの?」
いつもなら、「なに言ってんの、あるわけないじゃん」なんて笑って返すA。しかし、今日は違った。少しの沈黙の末、消え入るような声で言う。
「ち、がうし……」
なんだかそれは、恋する女の子みたいで。耳が赤く染まっているその様子は、少女漫画の主人公さながら。
「ま、頑張れよっ」
「あてっ」
少し強めにAの背なかを叩いて、自分も着席した。……青春かよ。
「春よ、私にも来ーいっ!」
「なに言ってんの、バカ」
「あんたよりバカじゃないわ」
「うっせ」
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きりんさん - キュンキュンがとまりません〜!!!!! (3月31日 18時) (レス) @page16 id: e58024eca2 (このIDを非表示/違反報告)
つき - 初めまして!お話し良すぎて…好きすぎました🤦♀️💓これからも応援してます、楽しみにしてます! (3月31日 17時) (レス) id: 37cdf4c57c (このIDを非表示/違反報告)
きのこ(プロフ) - お、ついに告白かぁ?!?! (3月31日 8時) (レス) @page16 id: 341e3469a0 (このIDを非表示/違反報告)
抹茶みかん(プロフ) - うわぁぁぁ、好きです…!!!これからも更新頑張ってください…!! (3月30日 18時) (レス) @page14 id: 9dacbb6ae3 (このIDを非表示/違反報告)
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作成日時:2023年3月28日 18時