episode 3 ページ4
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目が覚めたら、私は自宅のベッドの上で、昨夜の赤髪の男が近くの床に胡座をかいて座っていてバッチリ目が合った。
「っ……!?」
一気に脳が冴えて、私は布団を引っ張り胸から下を覆いながら背後の壁まで後ずさった。
布団一枚じゃ盾にはならないって分かってるけど、比較的軽傷になるかなみたいな。ちっさい抵抗です。
――いや、なんであの赤髪がここにいるの!?
「おい」
「は」
赤髪が背後のドアに呼びかけると堅い声が返ってきて、ドアが開き、茶碗とスプーンの乗ったお盆を持った黒服が入ってきた。
黒服は赤髪のそばに寄って、赤髪がお盆の上のものを取れば、お盆を脇にかかえて速やかに退室した。
「女」
赤髪に視線を移せば、顔の前にスプーンの添えられた茶碗が迫る。
って、これ両方私のじゃん。食器棚から勝手に使ったのか。
「食え」
異論は許さないという目で、赤髪は言った。
……な、なに?食べろ?
「な、なんでですか。お腹空いてないのでいいです」
それに、なんか怖いし……。マフィア的なやばい集団が作ったご飯(厳密には多分お粥)だよ。毒とか入ってたら死ぬじゃん。
唐突に昨夜の光景が蘇ってきて、ぞわりと肌が粟立ったが、その恐怖を気取らせないよう強気に拒絶した。
「食べません!いらないです!」
「……めんどくさ」
は?と思った時、赤髪がスプーンでお粥をすくい、口に含んだ。
静かに咀嚼して飲み込み、私を冷徹な双眸で見据える。
「二択だ。自分で食うのと、俺に
「!?」
は……っ!?なんなのその二択!?
「自分で食べるに決まって……!」
思わず声を張った後で思い出す。そもそも何故食べたくなかったのかを。
毒――……あ、でも、この人さっき自分で食べてた。てことは安全なのかな。
……もしかして、そのために食べた……?
「ならさっさと食べろ」
……まさかね。
はい、と返事をして、私は湯気の昇るお粥に手をつけた。
味のないそれを完食するまでの間、赤髪は私から視線を外して無言で待っていた。
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エス(プロフ) - ノアさん» いやー!!続きが楽しみですね!一生付いてきます!これからと体は気をつけて更新ゆっくりでもいいので頑張ってください!それと続き編ありがとうございます! (2020年8月27日 20時) (レス) id: 3190ad61df (このIDを非表示/違反報告)
ノア(プロフ) - ミルクショコラさん» 夏休みですか!最高ですよね!!短いのは残念ですが、是非とも満喫してください^^* (2020年8月27日 18時) (レス) id: 17af415a1e (このIDを非表示/違反報告)
ノア(プロフ) - エスさん» そう言っていただけて嬉しいです!私もどうなるかわかりません笑 これからもお付き合いくださると嬉しいです! (2020年8月27日 18時) (レス) id: 17af415a1e (このIDを非表示/違反報告)
ノア(プロフ) - 東雲さん» こちらこそありがとうございます!!長らくお待たせ致しました(汗) 続編移行したので是非これからもよろしくお願いします! (2020年8月27日 18時) (レス) id: 17af415a1e (このIDを非表示/違反報告)
ノア(プロフ) - わかさん» 私がきっかけなんですか!?めっちゃ嬉しいですありがとうございます……!これからも頑張ります! (2020年8月27日 17時) (レス) id: 17af415a1e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ノア | 作成日時:2019年9月5日 19時