裏の話 ページ5
「なんじゃお主、自分の名前を知らぬのか」
「...別に、そういうわけじゃ、ない」
少女は自分より一回り上の着物を着て、手当を受けていた。衰弱していた一昨日と比べて調子が良さそうだった。
「じゃあ、わしはお前さんをなんと呼べばいい?」
「なんでもいいよ。クソガキとか、てめえとか」
「それじゃ不便だから言っとるのじゃ」
剣呑な目をした包帯だらけの少女は暗い顔をして言った。
「私の名前なんて、母親にしか言われたことなかったから...、しかも一回きりしか、そんなん無いのと」
同じじゃん。とぼやく。
なるほど、この小童かなりのクセがある。
「構わんよ、お主が呼ばれたその名前を教えなさい、覚えておるんじゃろう?」
そう言われて蓋が外れたように、
小さく口を開けて、
どこか義務的に、
昔の記憶を引っ張り上げるように子供は声を出した。
「わたし、私の名前は______」
「曲者!!!なんでお前ここにいやがる!!」
「待て留三郎!今はそんな奴を相手にしているバヤイじゃないだろう!!」
「あれ良いの?私はAちゃんの大体の居場所知ってるよ」
暗くなり始めた塀の上、曲者と数人の忍たまが対峙していた。まあ雰囲気は険悪の険悪だが。
しかし「はあ?」と全員間抜けな声を出して思考が止まる。
なぜお前が知っているんだ。というかなんでAが失踪したことを知っている。我ら忍術学園の者だって気づいたのは今日の黄昏時だ。
「学園長だって大方予想がついているんでしょ?」
そう言われてその場にいた忍たま全員の視線が一つに集中する。その場にいた学園長は唸った。
「きっとAちゃんは死ぬよ。今だってこうしてる間に、黄泉の国に向かっているかもしれない」
「...もう一度言ってみろ。次はないぞ」
「やめてよ仙蔵!...雑渡さん、それはどういうことですか?だって今日だってあの子は普通に____、」
六年の善法寺伊作が立花仙蔵をなだめる。空気は淀みきって、一部の下級生は怯えはじめていた。
「学園長から話を聞いた方が早いよ。私のは予想で組み立てた一つの仮定にすぎないから」
言わねばなるまいのか、彼女のことを。
ただ、これは、彼女がひたすら隠したこの事実を言っていいものなのか。
「ほら大川学園長、打ち明けては如何ですか」
「...全て話そう。Aの、Aの生い立ちを_____。」
憎々しいと思わんとタソガレドキの曲者をにらみつけた。
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苺たると(プロフ) - 涙腺ゆるゆるにして見てました…。こういうネタ大好きなので嬉しいです!更新楽しみにしてます! (2020年6月29日 21時) (レス) id: 4ddd192ae6 (このIDを非表示/違反報告)
かまぼこうどん(プロフ) - MadHatterさん» ありがとうございます!この小説を楽しみにしていただけたら幸いです!無理をせずゆっくり書いていきたいと思います! (2018年3月23日 18時) (レス) id: 4829cee081 (このIDを非表示/違反報告)
MadHatter(プロフ) - ボロボロ泣きながら拝読させて頂きました。続き楽しみにしております。無理だけはなさらないでください。 (2018年3月23日 2時) (レス) id: 17134202e7 (このIDを非表示/違反報告)
かまぼこうどん(プロフ) - ざわさん» ありがとうございます。3月以降から本格的に更新を再開したいと思います。今回は生存報告としての今の現状とお話をあげさせて頂きました。引き続き応援よろしくお願いします。 (2018年2月12日 23時) (レス) id: 4829cee081 (このIDを非表示/違反報告)
ざわ(プロフ) - ドキドキしながら一気読みしてしまいました! この作品大好きです!素敵な小説をありがとうございます。受験はもうラストスパートでしょうか?お勉強頑張ってください!このコメントが届いているかどうかわかりませんが、心から応援しています...! (2018年2月6日 23時) (レス) id: c9576dec0e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:かまぼこうどん | 作成日時:2017年7月3日 22時