出番がきました ページ4
「忘れ形見、か。そりゃあ頭も執着するだろうに」
真っ暗な森の中。
提灯の光がぼんやりと石段の先を映し出していた。
今日は新月。どんよりした空には星一つ出ていない。
そんな夜だった。
「女は死んだのかい?」
「おう。...確か、あの時は頭自らが手を出したんじゃなかったか?」
「綺麗な女だったんだけどな...惜しいことを...」
「女?頭は女を愛していたんじゃなかったのか?」
真ん中の男は陽気に答える。酒が随分回っているようだ。
「ああそうさ、それはそれは愛していたよ。だが恐ろしく綺麗な女__露は他の男と契りを交わして逃げようとしてなあ、しかも新入りの戦で主人を失った若い武士と、さ。怒ったよそりゃあ」
「つゆ、か。Aの顔に似ていたのか?」
「そりゃあお前!さっきのガキの顔を思い出してみろ!瓜二つさ!まるで黄泉の国から帰ってきたみたいなほどにさ!あの女の子供なら、そりゃ成長すれば高く売れるだろうよ!」
「まあ、お頭ももったいないことをしたよな」
「だから、あのガキに執着しているんだろうねえ。
...露も露さ。子供置いて逃げれば自分だけが助かったかもしれねえのに...。あの女にも、母親の心があったってことだな!」
男の声が闇の中に消えていく。提灯の光が隣の男を映し出す。
...おかしいな、と首をかしげる。
俺達は5人の集団だよな?
あれ、先ほど先に行った男が2人、お頭はここにいないし、俺たちだって最初は2人だったはずだ。
...なんで俺、"真ん中"にいるんだ?
この隣の、男は誰だ?
気づけば背筋が凍りついた。提灯を男の顔に向ける。
微笑んでいる男、だけど、こんなやつ、しらない。
「おい!こいつ誰だよ!!」
声を張り上げて隣の仲間に呼びかける。返事が、ない。いつの間にかどこにもいない。
「もう良いぞ勘右衛門。だいぶ情報は収集できた。あとは六年の先輩方が救ってくれるだろう。雷蔵、先に行った2人は?」
「兵助と八左ヱ門が倒した」
まだいる。何処かから声がする。おい、どこだ、どこに______、
その時、首に違和感を感じて、首を見る。紐が、知らない紐が垂れていた。
上を向いた。
宙に仲間がいた。いや、ぶらんと浮いていた。
その時全てを察して、紐を外そうとした。
その瞬間、目がグルンと回って、足が宙に浮いた感覚と首の圧迫感を感じて、
「よし、全滅」
「俺らって、損な役回りだよなぁ」
石段に転がり落ちた提灯の火が消えた。
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苺たると(プロフ) - 涙腺ゆるゆるにして見てました…。こういうネタ大好きなので嬉しいです!更新楽しみにしてます! (2020年6月29日 21時) (レス) id: 4ddd192ae6 (このIDを非表示/違反報告)
かまぼこうどん(プロフ) - MadHatterさん» ありがとうございます!この小説を楽しみにしていただけたら幸いです!無理をせずゆっくり書いていきたいと思います! (2018年3月23日 18時) (レス) id: 4829cee081 (このIDを非表示/違反報告)
MadHatter(プロフ) - ボロボロ泣きながら拝読させて頂きました。続き楽しみにしております。無理だけはなさらないでください。 (2018年3月23日 2時) (レス) id: 17134202e7 (このIDを非表示/違反報告)
かまぼこうどん(プロフ) - ざわさん» ありがとうございます。3月以降から本格的に更新を再開したいと思います。今回は生存報告としての今の現状とお話をあげさせて頂きました。引き続き応援よろしくお願いします。 (2018年2月12日 23時) (レス) id: 4829cee081 (このIDを非表示/違反報告)
ざわ(プロフ) - ドキドキしながら一気読みしてしまいました! この作品大好きです!素敵な小説をありがとうございます。受験はもうラストスパートでしょうか?お勉強頑張ってください!このコメントが届いているかどうかわかりませんが、心から応援しています...! (2018年2月6日 23時) (レス) id: c9576dec0e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:かまぼこうどん | 作成日時:2017年7月3日 22時