雨の日、私が生まれた日。【忍たま】 2

保護者の心配 ページ21

「A！！」


ドタドタと駆け込んできた若草に強く抱きしめられる。肋骨に響いたので少し呻いてしまう。するとそれは気づいて力を緩めたけれど、離れようとはしなかった。


「おまっ、怪我して、」

「ごめんね」

「いなくなったかと思って、俺、もう戻ってこないんじゃねえかと」

「...ごめんね」

「...本当に、心配した」


作兵衛の赤みがかかった髪の毛がちくちく顔にあたる。声を震わせていて、鼻をすする音がした。


「大丈夫だよ。これからも私はここにいるし、後三年間はお世話になるつもりだから」

「...目、大丈夫なのか？」

「うん。すぐに良くなるよ」


ゆっくり作兵衛が離れていくと、目の前にいるということでなぜか安心した。私は、心配されていたんだなと気づく。鐘の音が鳴っている。ああそうか。学園長去ってからもうお昼になったのか。


「早く来すぎ」

「目、覚ましたって聞いた、から。すこっ、少しはっ、心配する身にもなりやがれっ」

「...左門と三之助は？」

「...置いてきちまった」


何気ない会話が何年ぶりのようなひどく懐かしく思えて、心がキュってなる。今、自分が笑えてるかどうかわからない。けれど嬉しかった。


「...ごめんね作ちゃん、私ってずるいね」

「まったくだ」

「...心配、かけちゃった？」


彼は泣いてくれた。もしかしたら、変な想像が働いて余計に不安になっていたのかもしれない。そこだけが妙に気がかりだった。

口をつぐんだ作ちゃんは何も言わない。私は静かに、次の言葉が来るのをじっと待った。


「...がいい」

「...もっかい、言って？」

「...ごめんねじゃなくて、別の言葉がいい」


鼻をいつもより倍くらい真っ赤にさせた作兵衛が小さな声で言った。


「...友達で、いてくれる？」


恐る恐る、と言った。言葉は静かに消えていった。だけど、確かに届くようにはっきり言った。


「馬鹿」

「ファッ」

「...俺がいなきゃAの部屋、すぐに汚くなるだろ」

「全くもってその通り」


一瞬目を合わせた後、目を腫らした作兵衛と笑いあった。

私は、学園長に言われた通り、"此処での生活"に戻るんだ。どんなに辛かろうと、どんなに悲しかろうと、ここで生きなさい。そう言われてしまった。

だから生きていこう。何があっても。





(あともうちょっとだけ。あと、少しだけ生きよう)





私は作ちゃんに笑いかけた。





「ありがとう、作兵衛」

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