ある男にまつわる小噺 ページ13
ここで一つ、小噺を致しましょう。
一人の男の話です。
男は戦で村をなくし、両親をなくし、生き延びる末に悪の道へと人の道理を踏み外した外道です。
同じような仲間が集まり、小さな群と化し、各地を転々とする日々。
そんなある日、男はある女を捕まえました。可憐でどこかに憂いを隠した、美しい女でした。
その美しさに惹かれた男は売り払う事なくいつの間にか、この女は自分の所有物だと勘違いしました。
人間の勘違いというのは、悲しいものです。
だから、まさか逃げられるとは思っていなかったのでしょうね。この女が、まさか手下の男に惚れ込んで、共に逃げ出して別の場所で生きられるとは夢にも思いませんでしたから。
まあ、何が起こったかはお察しの通りです。
本題はその後。ある日、ついに気が動転した男は我をなくし、愛していた女を、抵抗しなかった女を、いつの間にか抜刀した刀で攻撃してしまいました。
男にかかった血。
それを拭うことなく男は逃げ出した女を追いかける。その時、男に愛はあったのでしょうか。
いいえ。とも、はい。とも言えません。人の心など他人がわかるはずなどありません。
満月が綺麗な夜でした。
ただただ男は喜びました。
...ええ、はい。女は結果息絶えました。では何故喜んでいるか?普通悲しむか呆然とするはずではないのか?
女は自身の宝を置いて、あの世へと旅立ちました。
男はそれを見て笑いました。
無垢な子供に手を伸ばします。
こいつをあの女の代わりにすれば、今度は抵抗しないように躾ければ...。
もう、壊れていました。女を誤って殺してしまった事実だけは変えられません。
だから、だからこそ、その片鱗が欲しくて欲しくてたまらなかった。彼女のかけらが、依り代がどうしてもほしかった。
次は絶対に逃すまいと____。
小鳥の風切り羽をへし折って、
もう一生飛べないように、
籠の中で飼いならすように、
この世界には自分しかいないということを教えこんで、死ぬまで、自分の玩具だということを分からせるように。
美しかった小鳥の雛に、汚い手を伸ばしました。
...おしまいです。続きはないのか?これは小噺です。
小噺とは、簡単な話、ちょっとした世間話。
なにせ当事者がもういないので、本人から真実を伺う事も出来ないんですよ。申し訳ありません。
...小噺にしては面白くない?
面白いですよ。十分面白い。
まだ、生きていますから。
雛は、ちゃんと成長していますよ。
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苺たると(プロフ) - 涙腺ゆるゆるにして見てました…。こういうネタ大好きなので嬉しいです!更新楽しみにしてます! (2020年6月29日 21時) (レス) id: 4ddd192ae6 (このIDを非表示/違反報告)
かまぼこうどん(プロフ) - MadHatterさん» ありがとうございます!この小説を楽しみにしていただけたら幸いです!無理をせずゆっくり書いていきたいと思います! (2018年3月23日 18時) (レス) id: 4829cee081 (このIDを非表示/違反報告)
MadHatter(プロフ) - ボロボロ泣きながら拝読させて頂きました。続き楽しみにしております。無理だけはなさらないでください。 (2018年3月23日 2時) (レス) id: 17134202e7 (このIDを非表示/違反報告)
かまぼこうどん(プロフ) - ざわさん» ありがとうございます。3月以降から本格的に更新を再開したいと思います。今回は生存報告としての今の現状とお話をあげさせて頂きました。引き続き応援よろしくお願いします。 (2018年2月12日 23時) (レス) id: 4829cee081 (このIDを非表示/違反報告)
ざわ(プロフ) - ドキドキしながら一気読みしてしまいました! この作品大好きです!素敵な小説をありがとうございます。受験はもうラストスパートでしょうか?お勉強頑張ってください!このコメントが届いているかどうかわかりませんが、心から応援しています...! (2018年2月6日 23時) (レス) id: c9576dec0e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:かまぼこうどん | 作成日時:2017年7月3日 22時