第81話「親の顔より」 ページ45
.
私の親はこの世の何処にもいない。
死んだ親は最早他人同然。昔の……両親の顔は思い出せないけど、でも、私にとっては彼らが親だった。
私にでも理解できる。これはとっても不思議な矛盾。
実の親より偽の親の顔の方が思い出せる。とても奇妙な感覚だった。
「悠仁。彼女は、Aは『天与呪縛』と呼ばれる特殊な力を持っていてね。呪力の無い君がそんじょそこらの人間と懸け離れた運動神経を持つのと同じように、彼女は生まれた瞬間から途轍も無い怪力を天から授けられた。
その代償として、つまり呪縛によって、彼女は知能と記憶力が同年代の人間と比べ劣っている。恐らく、幼少期の記憶から徐々に削られていっている」
は〜長い。でも内容は何となく分かった。
私の馬鹿は天命により授かりしもの。つまりデスティニー!これが我が人生、セラヴィ!
呑気に構える私に対し、彼はどこか複雑そうな顔をしていた。
「……そっか。ゴメン、事情も知らねーのにずけずけ言っちゃって。メイドさん、見かけによらず苦労してんだな」
「え?苦労なんてしてないよ?全然気楽に生きてます。記憶できないのは大変だけど、死なないバフ受けたのは儲けものだからねえ」
不自然に咲いた地面の花をぷちぷち千切っていく。花の汁が手に着いた。甘いのだろうか。
私はこの花みたいに容易く死なない。
「親の顔分かんないってのも、記憶力云々関係なくて元々親とはそんな仲良くなかったし売りに出されたようなもんだから、正直ほんとに、彼らが死んで特に何も思えないんだよ」
だからそんな顔しないでよ。
私はそのおかげで悟お坊ちゃまと出会えたんだからさ。
………いや、君のその顔は本当に“同情”か?
もしかして、酷いやつとでも思われてる?
「ま、そこまでにしといて。僕も親の顔覚えてねーし生きてるのかどうかも分かんないからAと一緒〜」
「うぇーい悟お坊ちゃまいえーい」
ダル絡みで試しに拳を上げてみたら「ウェーイ」と拳をこっつんこして乗ってくれた。こういうところよお坊ちゃま。貴方は昔からやれば出来る子だと思ってた。
「あっいつの間にまた脱線した。
ほら見たことか。やっぱ君のテンションに引っ張られると話が道からどんどん外れて挙句に血の池に転がり落ちるんだよ」
「地獄へ真っしぐらなのなんで?」
唐突に殺意100%ですかお坊ちゃま。
ケンメイなメイドは口を閉ざします。
.
1856人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「呪術廻戦」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
sou(プロフ) - はじめまして!!読み始めたばかりなのにもうこんなにも進んでしまいました!!基本的に夢小説でのギャグ系苦手なのですが、こちらすっごく面白くて!!これからも最終章行ってきます! (2022年2月11日 16時) (レス) @page50 id: 26a665cc7a (このIDを非表示/違反報告)
巫礜 - 2章完結おめでとうございます!!とても面白くて一気に読んでしまいましたー!3章も楽しみに待ってます!無理せず頑張ってください!応援してます!! (2020年11月29日 23時) (レス) id: af56b806d8 (このIDを非表示/違反報告)
き(プロフ) - 完結おめでとうございます!今回も楽しく読ませて頂きました!展開に置いてかれる悠仁がちょっと面白かったですw3章も楽しみにしてそれこそ犬のように待ってます!! (2020年11月29日 13時) (レス) id: c55596aced (このIDを非表示/違反報告)
呉羽(プロフ) - 2章完結おめでとうございます!いつも通知が来るたびワクワクしながら開かせてもらってます。これからも応援してます!では、お体に気を付けて。 (2020年11月29日 12時) (レス) id: cfabc7c0e0 (このIDを非表示/違反報告)
レミリア(プロフ) - 第2章の完結おめでとうございます。いつもはぁはぁ息を荒くしながら見させて頂いております(キモい)第3章も楽しみです! (2020年11月29日 10時) (レス) id: 0a87aae102 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:Nny。 | 作者ホームページ:
作成日時:2020年11月23日 1時